わかるだろうけど、僕もかつては大勢の子供たちと同じだった。プロの選手を見ても、自分のような普通の人間にそんな夢は叶わないと思っていた。
僕の唯一の利点は、バルカン人の父親というスーパーヒーローの存在だった。
僕が何者かを理解するには、父のステファンについて知る必要がある。父はマケドニア人の両親のもとスウェーデンで生まれ、バルカン人としてのメンタリティを持っている。僕がストックホルムのブロンマポジカルナでプレーし始めたとき、父は朝、僕を試合まで車で連れて行ってくれたけど、シャトルバス・サービスの管理職としてアーランダ空港で夜勤をして働いていた。そこで25年間も働き、父の母親も同じ会社でバスを運転していた。ストックホルムに飛行機で行ったことがあるなら、祖母のバスに乗った可能性が高いだろう。
父は夜勤から帰宅すると、すぐに台所に行き、朝食を作り、車で僕を試合に連れて行ってくれた。寝ないでね。
そして父は決して文句を言わなかった。一度もだ。
ある日、僕がほとんど走っていなかった試合があって、ハーフタイムに父が怒っているのがわかった。もちろん、スウェーデンでのことだから、父は息子である僕をわきに連れて行き、静かに言葉を交わすのが普通だ。でも、両親、コーチ、チームメイトなどみんなの前で、父は僕に向かって叫び始めた。
「命にかけて誓うぞ。もっと頑張らないなら、お前をここに置いて、俺一人で車で家に帰ってやるからな」
とにかく、死ぬほど恥ずかしかったよ。
でも、父は正しかった。父はその時点で20時間も起きていた。父は僕にすべてを捧げていたのだから、僕にもすべてを捧げてほしかったんだ。
僕がブロンマポジカルナで国外のチームとプレーするために遠征に出たとき、父はいつも一人でついて来てた。アゼルバイジャン、イタリア、ドイツ。父はお金を貯めて、僕と姉をロンドンとミラノのチャンピオンズリーグの試合に連れて行ってくれた。「我が子たちよ、来週は学校を休んでくれ。いっしょにロンドンに行くぞ」って感じで。
それがバルカン人の生き方なんだ。父は自分がどれだけ一生懸命働いたか、どれだけ犠牲を払ったかを決して口にはしなかった。父はただそれを実践しただけだ。
フットボーラーとして、そして人間として、父のその姿を見ることは最高の教育だった。
