ケインの将来を語る関係者は、パラティチの影響を「驚異的」と表現し、ハーランドがシティに移籍したことで、イングランド代表キャプテンが最終的にトッテナムとの新契約にサインすることは、これから十分にありえる流れとなった。
もちろん、昨年7月1日に就任したパラティチには大きな失敗もあった。それは、クラブにまったくふさわしくないヌーノ・エスピリト・サントを起用することになった、1年前の夏の混沌とした監督探しだった。
また、イングランドのフットボールに適応するために時間とコンテの指導が必要な選手、あるいは単に適応できない選手と契約したこともそうだ。しかし、ディフェンダーのクリスティアン・ロメロを4100万ポンドという破格の値段で獲得した功績は大きい。
ロメロは、1月に加入したデヤン・クルゼフスキやロドリゴ・ベンタンクールと同様、ユベントス時代からパラティティの知る存在であった。イタリアのクラブで長い時間をベンチで過ごした2人の選手と契約することの賢明さを疑問視したのは、この私だけではないだろう。しかし、コンテの指導のもとでの彼ら3人の影響力がスパーズに変革を起こしているのだ。
週末にゴールとアシストを記録したクルゼフスキは、これからスパーズが完全移籍で獲得するには2920万ポンドを要するが、現時点で、スウェーデン人はすでにその金額の倍以上の価値があるだろう。トッテナムが最初に支払った1580万ポンドは、ユベントスがドゥシャン・ヴラホヴィッチに6300万ポンドを費やしたためにお金を必要としていたユーベにしてみても、プレミアリーグの相場からしてみても、はした金のように思える。
役員室、そしてダグアウトでの情熱
チーム・バスのブランド化や試合当日のスーツ着用にこだわったほか、パラティチは昨夏、クラブの内部でもうひとつの微妙な変化を起こし、レヴィの義兄であるアラン・ディクソンを昇進させた。ディクソンは選手との連絡係として人気があったが、パラティチは彼の能力を認め、ドレッシング・ルーム、特にイングランド人選手とヘッドコーチであるコンテとのパイプ役として「チーム・マネージャー」に任命したのである。試合当日は、ダグアウトで仕事に従事している。スタンフォード・ブリッジでは、コンテの近くにいるブラッド・フリーデルのそっくりの男、アラン・ディクソンに注目してみよう。
対立も辞さない激しい気性を持つパラティチは尊敬を集めているが、常にトッテナムのクラブ内での人気投票に勝ち続けることはないだろう。チームドクターはその役割を事細かに指示され、シェフはその食事のレベルに批判を受けているからだ。
彼は冷酷にベストを追求し、戦術的な洞察力に優れていると言われる。だからこそ、パラティチはマンチェスター・ユナイテッド戦の敗戦後に怒りを爆発させ、就任わずか4ヶ月でヌーノをクビにするよう進言したのだ。
ヌーノの進退問題でもそうだったが、パラティチは役員会でも強気で意見を述べ、自分に不利になると感じた決定には大声で抗議の意味を込めて辞表をちらつかせることもあるそうだ。