試合前の準備に関しては、前任者たちと比べてこのイタリア人は、舞台裏でやっていることはあまり変わっていない。選手たちは、週末の試合前夜にホットスパー・ウェイにある宿泊施設「ザ・ロッジ」に宿泊し、試合前にホットスパー・ウェイのトレーニング・コンプレックスに集合する。
昼過ぎのキックオフであれば前日に、夕方のキックオフであれば当日の朝に、軽い戦術練習とセットプレー専門コーチのジャンニ・ヴィオとともにセットプレーのセッションを行う。
試合当日、選手たちはコンテやコーチング・スタッフと朝からミーティングを行う。ヌーノ・エスピリト・サントの時代には、グループミーティングはほとんど行われていなかったので、ジョゼ・モウリーニョの時代に戻った部分である。その後、トッテナム・ホットスパー・スタジアムに向かうバスで出発する前に、ザ・ロッジで一緒に食事をする。選手たちが別々にホワイトハート・レーンに向かい、名物であった試合後の渋滞に巻き込まれたのは昔の話だ。
ファンはスタジアムを「ホーム」にするために重要な役割を果たしたが、ファン不在の無観客時代を過ごしたモウリーニョのスパーズには様々な影響を及ぼした。タイトル請負人として有名なポルトガル人は、観客の前でプレーするのが大好きで、観客を熱狂させただろう。しかし、ファンがいないことで、彼はより現実的な戦術で試合に臨むことができた面もあり、それは満員の観客の前ではあまりうまくいかなかったかもしれない。
エスピリトサントについては、彼には「つなぎ役」という印象が常にあったし、おかげでファンは彼にテコ入れをすることが難しくなり、その上でフットボールの内容も悪化して泥沼にハマっていった。コンテのもとで、再び信念と真の興奮がよみがえり、ホワイトハート・レーン、ノーサンバーランド・パーク、ブルース・グローブ、トッテナム・ヘイルとセブン・シスターズ(いずれもスタジアム近隣の駅)に向かう列車の中から、最近の記憶の中でどのシーズンよりもこの土曜日は期待にあふれており、その盛り上がりがスタジアム内でも再現されたのだ。
スパーズは、そのファンの喧騒を活用するために、様々な方法で、スタジアム内の演出方法について試行錯誤している。キックオフ直前のスタジアムの雰囲気を最高潮に盛り上げるために、試合前の音楽や映像技術をいろいろと試めしてきた。
過去には、The FugeesのReady or Notのリミックスが使用され、好評を博したことがあった。また、スター・ウォーズ/ファントム・メナスのDuel of the Fatesは昔から人気があり、Glory, Glory Tottenham Hotspurは試合前に使われることもあるが、通常はチームが勝利した試合後に使われることが多い。