Tom English/BBC Scotland
この写真のアンジ・ポステコグルーは、セルティックのフットボール・フィールド脇で撮った写真よりも、はたまたスコットランドで獲得したトロフィーを祝う写真よりも、魅力的なものだと言える。
横浜マリノスやブリスベン・ロアー、サッカルーズ(オーストラリア代表)、サウス・メルボルン・ヘラスで活躍した頃の写真も、5歳の時に撮られた「24」と書かれたカードを持っている写真よりも秀でたものはない。
この写真の数字は、両親が彼をギリシャのアテネの軍事政権から、安全だが不確かなオーストラリアのメルボルンに連れて行ったときの入国管理番号である。そこがすべての始まりだった。ゆえに、この写真には痛切な思いが込められているのだ。
この幼い少年がカメラのレンズを見つめる眼差しは、何年も後にオーストラリア代表の監督となり、ティム・ケーヒルの言葉を借りると、「トレーニング中の選手たちの後頭部に穴を開けるような眼差し」に変わっていった。
ケーヒルの友人でありオーストラリア代表でプレーしていたポール・トリンボリは、ポステコグルーは多くを語らず、人々に快適な環境を整えようとはしてくれないので周りの人々の「やる気を削がせる」と語っていた。
この5歳の少年の写真からも、その一端を垣間見ることができる。実に険しい表情である。
これこそが、アンジェロス・ポステコグルーである。5年後、両親は彼の名前をアンジェロス・ポステコスに法的に変更したが、彼はポステコスという名を受け入れることなかった。