ポルトガルで育ったダイアーのフットボールに対する理解やボールを扱う技術力は、3バックのセントラル・ディフェンダーとして完璧なものである。
機動力のあるディフェンダーに囲まれ、さらに中盤の深い位置で2人のミッドフィルダーが盾となって守っていれば、彼のスピード不足はそれほど問題にはならない。また、チームの中心で試合を見守り、組織化し、周囲に声をかけて指示を出せる。かつてジョゼ・モウリーニョが指摘したように、ダイアーは「言い争いを好む」選手である。
要するに、これがダイアーのベスト・ポジションなのだ。しかも、システムの達人であるコンテの下でそれを磨き上げている。
デクラン・ライスやカルヴィン・フィリップスが台頭してくる前のロシア・ワールドカップを含め、イングランド代表で務めたホールディング・ミッドフィルダーの役割など、ダイアーがポジションでプレーしたことから得た経験や知識を生かすことができるポジションに、現在の彼は就いている。
「彼が移籍したきたとき、中盤でプレーすればもっと良いディフェンダーになれると言ったんだ」
そう語る元トッテナムのセンターバックでキャプテンを務めたレドリー・キングは、ダイアーがミッドフィールドからディフェンダーへの本格コンバートを決めた時のジョゼ・モウリーニョのコーチング・チームの一員であった。
「ゲームをより簡単に見ることができるようになるんだよ。私自身、中盤でかなりのプレーをした経験があるので、センターバックになると試合と向き合い、それにより多くの時間を使えるようになるんだ」
「彼のボールの扱い方、中盤にボールを流し込むタイミング、最後尾に残るべきタイミングや、相手に詰め寄るタイミング、こうした小さなことすべてを学ばなければならないんだ。それは経験を積むことで、すべてのコツを学ぶことができるんだよ」
「でも、中盤でプレーした経験があると、中盤から走って下がってくる選手とはまた違った感覚になるだ。私の場合はゲームをもっと簡単に感じ取れることができたし、エリックもそれを感じているだろうね」
「彼が本来の輝きを取り戻し、本物のトップクラスのセンターバックのように見えるのは、本当に喜ばしいことだよ」