コンテは戦いの比喩を使うのが好きで、プレシーズンの間、「The Marine（海兵隊員）」と称される伝説のフィットネスコーチ、ジャン・ピエロ・ベントローネの目を盗んで、士官候補生のように選手たちを鞭打った。
チェルシーとインテル・ミラノで、コンテは「戦闘マシン」を生み出すと語って歴史的なタイトルを獲得したが、今、彼はスパーズでその再現を目指している。それはすなわち、コンテの要求に忠実に従う戦闘本能を持った厳格に訓練された戦士たちだ。
ケインとソンという破壊的な武器を持っているスパーズでは、コンテ自身が、昨シーズンにクラブを4位に導くのが「奇跡」だったと誇張したとしても、その武器が最も重要な歯車のように感じ続けているだろう。ちなみに、コンテが11月にスパーズの監督に就任したとき、4位とはわずか2ポイント差だったのだ。コンテの最大の功績は、プレシーズン開始時に即戦力となる経験豊富な選手と獲得することの価値を、ダニエル・レヴィ会長に納得させたことのようだ。マネージング・ディレクターのファビオ・パラティチもまた、レヴィへの働きかけにおいて同じくらい影響力があったようだが。
このヘッドコーチは、ファンやクラブを自分の手のひらの上で転がしており、自分が強い立場にあることに気づいていないわけでは決してない。
「延長オプション」があるものの、今シーズン終了までの期限となっている彼の契約は、いずれスパーズがつまずき、コンテが不満を唱え始めた場合に話題になることは必至だが、本人にとって短期契約はクラブへの重要な牽制になる。コンテを幸せ保つために、スパーズは彼が望んでいるものを与え続ける必要があるのだ。
スパーズはまだ一流のセンターバックを必要としており、さらに創造性のある攻撃的な戦力を狙うこともありえる。
心配の種があるとすれば、それはスケジュールであろう。昨シーズン、コンテは1週間に3試合を戦うことが困難であると認め、実際にコンテのスパーズが好成績を出し始めたのは、ヨーロッパ・カンファレンスリーグから敗退した後だった
より大きなチーム戦力とのプレシーズンのトレーニングが新シーズンを後押しするだろうが、問題は、ヨーロッパ戦での実績が彼のこれまでの経歴で唯一の汚点であり、シーズンを通して数日おきに戦う日程で結果を重ねられるかどうかだ。
2008年以来となるトロフィーを期待するファンが多い中、コンテは今のスパーズが昨シーズンよりも良くなることを望んでいると語ったが、これまで彼はタイトルを獲得することでその評価を高めてきた。
本気でタイトルを狙いに行くのはまだ遠い未来の話だろう。だが、今のトッテナムは、「アントニオ・コンテのトッテナム」であり、それはこれまでとの違いになる。
