トッテナム・ホットスパーの2026年冬の移籍市場は、スカッドを強化するという本来の目的を果たせぬまま幕を閉じた。主力11名の負傷という未曾有の危機に対し、クラブが投じた実質的な補強費はわずか1300万ポンド。経営陣の野心と現場の窮状の間に横たわる巨大な乖離が浮き彫りとなっている。
レポート
トッテナムの今冬の移籍市場は、1月1日時点よりもスカッドを弱体化させたという著しく厳しい評価で締めくくられた。クラブはコナー・ギャラガーを3460万ポンドで獲得し、19歳のDFソウザを1300万ポンドで加えた。これにより選手獲得に投じた総支出は約4760万ポンド(約92億円)に達したが、昨季の得点王ブレナン・ジョンソンを3500万ポンドで売却したため、これらを差し引いた実質的な投資額である「純支出(ネット・スペンド)※」は、わずか1300万ポンド(約25億円)に留まった。
補強の焦点となっていた左ウィングの確保は、最後まで実現しなかった。アントワーヌ・セメンヨがマンチェスター・シティを選んだ後、クラブは代替案を模索したものの、スカッドを真に向上させる選手を見つけられず、最終的に「夏まで待つ」という消極的な決断を下した。また、アンディ・ロバートソンの獲得もリヴァプールとの間で合意間近であったが、リヴァプールがローマからコスタス・ツィミカスを呼び戻せなかったことで、このベテラン左サイドバックの加入も土壇場で消滅した。
この補強の停滞は、11名の負傷者を抱えるトーマス・フランクにとって致命的な打撃だ。1月だけでベリヴァル、ベントアンクール、クドゥスら9名が離脱し、主力級のセンターバック3名とフルバック2名を欠く異常事態にある。こうした惨状に対し、主将クリスティアン・ロメロがSNSで「恥ずべき(Disgraceful)」と投稿し、現場の怒りを代弁する一幕もあったが、クラブがデッドラインデーに届けたのはU21向けのジェームズ・ウィルソンのローン加入のみであった。
特筆すべきは、強化部門の不可解な動きだ。クラブはファビオ・パラティチを移籍期限までノースロンドンに引き留めた。ヨハン・ランゲとの「二人のスポーツ・ディレクター」体制を敷きながら、1月17日にヴィナイCEOが宣言した「クオリティと経験、リーダーシップの追加」という公約は、結果としてギャラガーの補強のみに集約される形となった。パラティチは期限終了後、即座にフィオレンティーナへ移籍。彼を最終日まで留めておいた多大なる意味がどこにあったのか、ファンには不信感だけが残る結果となった。
フランクは「1月1日よりもスカッドが弱くなっている」と認めつつ、パニックバイを避ける姿勢を強調したが、現在のプレミアリーグ14位という立ち位置において、この「雨の日に備えない」楽観的な戦略が、後半戦の命運を著しく危うくしている事実は否定できない。
