トッテナム・ホットスパーの元会長ダニエル・レヴィが、自身が保有するクラブ株式の売却交渉を進める中、オーナーであるルイス・ファミリーがその売却先を制限する権利を一切持っていないことが判明した。支配権の行方を左右するこの「法的空白」の衝撃を詳報する。
レポート
トッテナム・ホットスパーの所有権を巡る状況は、さらなる混迷の様相を呈している。『The Telegraph』のマット・ロー記者が独占的に報じた内容によれば、オーナーであるルイス・ファミリーは、元会長ダニエル・レヴィが自身の持ち株を誰に売却するかを制御する権利を保持していないことが明らかになった。
レヴィは、クラブの株式86.58%を保有する親会社「ENIC」の29.88%という多大な持ち分を依然として維持しており、その価値を約10億ポンド(約220億円)と見積もっている。
特筆すべきは、ルイス・ファミリーにはレヴィの持ち株に対する「先買権(Right of First Refusal)※」や、他者のオファーに条件を合わせる「対抗権利(Matching Rights)」が契約上存在しないという事実だ。これは、レヴィがルイス・ファミリーの意向や承認を一切仰ぐことなく、自らの判断で第三者——たとえそれがオーナー家にとって不都合な相手であっても——に株式を譲渡できることを意味している。
現在、レヴィは香港の実業家を含むアジアのコンソーシアムと売却交渉を行っているが、今回の「阻止権の不在」という事実は、買い手側の交渉力を著しく高める多大な要因となるだろう。ルイス・ファミリーはこれまで、レヴィという「実務の番人」を通じてクラブを間接的に支配してきたが、そのパートナーシップの根底にある法的拘束力が極めて脆弱であったことが露呈した格好だ。
10億ポンドという巨額の取引の背後で、ノースロンドンの支配権を巡るチェスゲームは、オーナー家のコントロールを離れた未知の領域へと突入している。
