【舞台裏】沈没の危機か、反撃の船出か。マドリードで交錯する「ボート」の行方と再会の予感

イゴール・トゥドールが提唱した「ボート」のアナロジーが物議を醸す中、トッテナムはチャンピオンズリーグ・ラウンド16のアトレティコ・マドリード戦に向けてスペインの地に降り立った。国内リーグでの泥沼の連敗、降格圏の足音、そしてスタンドに現れる「かつての英雄」の影。沈没の危機に瀕するHMSトッテナム・ホットスパーを巡り、マドリードの夜に様々な感情が交錯している。

✔ トゥドールの「ボート」論にポロが笑顔で同調。ドレッシングルームの不和を否定
✔ シャビ・シモンズの孤立。データが示す圧倒的なチャンス創出能力と現状の乖離
✔ 18歳の怪物メリアが練習合流へ。ポチェッティーノはスタンドから古巣を「視察」

レポート

揺れるスカッドと指揮官の「航海術」

『football.london』のアラスデア・ゴールド記者によると、トゥドールが提唱した「ボートに残るか降りるか」という冷徹な選別理論は、マドリードでの会見でも注目の的となった。トゥドールは自身の海軍の比喩(アナロジー)について問われると、ややはぐらかすような態度を見せたが、トレーニングでの選手たちの姿勢には満足していると語った。

「今朝のトレーニングを見て、ロメロやスペンスが戻ってきたことを我々はハッピーに思っている。彼らは通常、守備の要としてプレーする選手たちだ。これまでの3試合、僕らは本来のポジションの選手を欠いていたが、明日は素晴らしい経験になるだろう」と、主力復帰への期待を口にした。

また、就任から時間が経過するにつれ、セッションの質が向上していると強調しつつも、長年染み付いた「古い習慣」を変えるには予想以上に時間がかかると、スカッドの意識改革の難しさも認めている。

会見に同席したペドロ・ポロは、前節クリスタルパレス戦で交代させられた際、ベンチの椅子に怒りをぶつけた場面について笑顔で釈明した。スペインメディアが「監督への不満か」と詰め寄る中、ポロは「あれは僕自身の反応であり、監督に対するものではない。僕はピッチで200%を捧げる選手だし、僕らは負けるのが大嫌いだ。あのような状況に置かれたことへの苛立ちだった」と語り、トゥドールとの不仲説を打ち消した。

さらに、トゥドールがリシャルリソンの先発を明言した際、ポロは「センターバックじゃないのか?」と、自身やパリーニャが急造センターバックを務めた近況を逆手に取ったジョークを飛ばし、会見場を和ませる場面もあった。

その一方で、シャビ・シモンズの状況には不透明感が漂っている。パレス戦でスタメンを外れたオランダ代表の若き才能は、トゥドール体制下で自身のポテンシャルを最大限に発揮できていないことに不満を募らせているとされる。しかし、データ上では彼の価値は依然として際立っている。

今季の欧州の舞台において、シャビ・シモンズのパス精度は86%を誇り、キーエリアへの侵入回数はヴィルツ(15回)やエゼ(9回)を上回る16回を記録。チャンス創出数でもクラブのトップに君臨している。個人分析官やメンタルコーチを自費で雇い、オフの日も練習場に現れるほど向上心の強い22歳が、現在の「ボート」の中でマージナル(周辺的)な存在に甘んじている現状は、スカッドの創造性欠如の直接的な要因となっている。

明るいニュースとしては、1月に獲得した18歳のアイルランド人ストライカー、メイソン・メリアの状況だ。背中の負傷や感染症で合流が遅れていたが、月曜日にホットスパー・ウェイのピッチでトレーニングを再開した。アイルランドで既に98試合のシニア出場経験を持ち、33ゴールに関与している怪物は、まずはU-21とトップチームを往復しながら、早期のデビューを目指すことになる。

そして火曜日の夜、スタンドにはマウリシオ・ポチェッティーノの姿がある。彼はアトレティコの招待客として、2019年のCL決勝の地に戻ってくる。表向きはジョニー・カルドーゾの視察だが、トゥドールがスタンドに見上げる位置に「かつての英雄」が座るという構図は、ノースロンドンの未来を予感させる象徴的な夜となるだろう。

記事解説

「ボート」を救うのは戦術か、それとも個の覚悟か

トゥドールとペドロ・ポロが会見で見せた「和気藹々とした雰囲気」は、ドレッシングルームが完全に崩壊しているわけではないことを示唆している。しかし、ポロのジョークの裏にある「急造センターバック」という現実は、スカッドの層の薄さと戦術的混乱を皮肉にも物語っている。トゥドールが言う「古い習慣」とは、アンジェ体制から続く攻撃的な本能なのか、あるいは窮地に陥った際に見せる精神的な脆さなのか。いずれにせよ、リシャルリソンを先発に据え、ロメロを軸とした本来の3バックで挑むアトレティコ戦は、トゥドールの哲学がスカッドに浸透しているかを測るリトマス試験紙となる。

特にシャビ・シモンズの扱いは、今後のトッテナムの浮沈を占う上で極めて重要だ。モドリッチやエリクセンもノースロンドンでの序盤戦は適応に苦しんだ歴史があるが、現在の降格争いという極限状態は、若き才能の成長を待ってくれるほど甘くはない。彼のようなデータを重視し、ストイックに自己改善を図る選手が「ボート」から振り落とされるようなことがあれば、それはスカッド全体のインテンシティ低下を招く恐れがある。

ポチェッティーノの存在は、現体制への無言の圧力となる。USMNTの監督としてマドリードを訪れるという大義名分はあるものの、彼がスパーズへの愛着を一度も隠したことがないのは周知の事実だ。トゥドールが優先事項として掲げる「プレミアリーグ残留」という現実的な港に辿り着くために、今夜のメトロポリターノで何が必要なのか。若きメリアの合流という希望と、ポチェッティーノという過去の影。マドリードの夜は、トッテナムという船がどの方向へ進むべきかを決める、残酷で美しい分岐点となるだろう。

情報元:Pochettino Tottenham truth, Pedro Porro’s Igor Tudor joke, Mason Melia update and Xavi problem

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会見で見せたジョークの真相

今回のマドリードでの会見において、ペドロ・ポロがトゥドールに対し「リシャルリソンはこのポジションで使うのか?」とジョークを飛ばしたポジションはどこか?

1. ゴールキーパー
2. センターバック
3. 左ウイングバック
4. セントラルミッドフィルダー

正解:2

正解はセンターバックだ。ポロ自身やパリーニャが急造センターバックを務めていた最近の状況をネタにしたもので、会見場を沸かせた。しかし、このジョークの裏には、負傷者続出により選手たちが本来のポジションでプレーできていないというトッテナムの深刻な窮状が隠されている。