鍛錬が実を結ぶ ポチェッティーノ体制の進化
このエントリーをはてなブックマークに追加 Check スパーズ関連のメディア報道・その他2015年2月16日
テレグラフ紙のジョナサン・リュウ記者による、マウリシオ・ポチェッティーノ体制のスパーズの進化について。エスパニョール、サウサンプトンでの実績を、当時の教え子たちのコメントを交えたコラム。

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サウサンプトン時代に苦行として定評があった厳しいトレーニングをマウリシオ・ポチェッティーノ監督はプレシーズンから導入し、それがシーズン半ばを過ぎた今、スパーズで如実に実を結んでいる。

イングランドのフットボールでのチャレンジからわずか2年。マウリシオ・ポチェッティーノのプレシーズンのセッションへの評価はうなぎ登りで、神憑り的な効能とさえ言われ始めている。2013年にサウサンプトンにやってきたアルゼンチン人指導者は、キャンプ地ポルトガルでスタートしたブートキャンプのなかで選手たちに燃えたぎる炭の上を歩かせた。トッテナム・ホットスパーでもその徹底した厳しさは変わっていない。

今シーズン、ポチェッティーノのもとで最も劇的な成長を見せるハリー・ケインは語る。

「正直に言えば、プレシーズンは快適とは言えない時間が流れたね」

「ダブルセッションで、繰り返し限界まで体を追い込んだ。でも、目的があってやったことなのさ。今、皆さんがその効果を目の当たりにしているでしょ」

2ヶ月前は10位に低迷していたものの、先日のノースロンドン・ダービーを制して5位に浮上したスパーズ。すでに今シーズン、スパーズは公式戦を40試合も戦っているが、彼らには愕然たる意志があり、これまでの試合のなかで85分過ぎに記録した決勝ゴールは6度と精神と肉体の屈強さを示している。

サウサンプトン時代のポチェッティーノは、シーズンの終盤戦に向けて調子を上げていくべく選手たちに特訓を課し、プレミアリーグの終盤戦も力強く戦い抜いた。そして今、トッテナムでも同様の取り組みに挑むポチェッティーノ。すでに厳しい鍛錬は実を結んでいる。プレシーズン中のポチェッティーノの目的は徹底的に選手の肉体をいじめ抜き、そして強靭さを身につけさせることであった。サウサンプトン時代に炭の上を歩く苦行もその一例。その他にも、選手の鎖骨の上に弓矢を飛ばし、精神力を叩き直すといった訓練もあったようだ。

当時を振り返るリッキー・ランバード(現リバプール)。

「あれは気力で困難を乗り切るためのチャレンジだったんだ。シーズン中にあれより酷いことは起こりえないって悟れるからね」

エスパニョールとサウサンプトンでポチェッティーノのもとでプレーしたダニ・オズバルドは、「イヌのような扱いだった」と表現する。実に古臭いやり方にも思われ、または軍隊のようでもある過酷なトレーニング。しかし、それは綿密に計算されたフレームワークに基づいている。だからこそ、その哲学がポチェッティーノのなかで揺るぐことはないのだ。ポチェッティーノは移籍マーケットでの選手補強よりも、トレーニンググラウンドでの選手鍛錬でのチーム強化を優先する。本人の弁によれば、マネージャーというよりもヘッドコーチという役割が適切ということだ。選手たちを自分のプレースタイルに合うように鍛え上げる方が、新たにより有能な選手を獲得するよりも効率的であるとの信条である。

現在、チーム内得点王のケインだけが新監督のもとで才能を飛躍的に開花させたアカデミー出身の選手ではない。中盤ではナビル・ベンタレブが昨シーズンのティム・シャーウッド体制から続けて成長を続けている。その横に並ぶライアン・メイソンは、ボール奪取の能力を高めており、今シーズンのプレミアリーグで90分でのタックル数がメイソンを上回るのはルーカス・レイバとチャーリー・アダムのみだ。

「Why not?(なぜ信頼しないんだ?)」

なぜ若手選手に信頼を置けるのか、との問いかけにポチェッティーノはそう答える。

「それが我々(ポチェッティーノとコーチ陣)のアイデンティティだ。若手選手には、彼らの真価を示すためのチャンスを与えてあげなきゃいけない。確かに我々は勇敢だろうね。エスパニョールでの最初のシーズン、我々はアカデミーから25人の選手をデビューさせた。忍耐強さと選手の能力を見抜く才能が必要になるが、我々にはそのクオリティがあると思っている」

トレーニンググラウンドで徹底的に追求するのは選手のフィットネスだけでなく、試合に向けての戦術的な準備にも及ぶ。エスパニョールでは選手のシャツにGPSを装着し、試合形式のトレーニングで選手たちの動きをiPadで追跡し、合間にその分析結果を選手たちと確認をしていた。サウサンプトンで右サイドバックを務めていたネサニエル・クラインがそのトレーニング・セッションについて説く。

「監督は高い位置でのプレスを指示した。ハイラインを維持しながら、難しい状況でボールを受けることになるし、そこでポゼションを保つことを練習するんだ。余裕を持ってプレーするよりも、フットボールに自信が持てるようになるんだよ。このトレーニングで僕らの守備陣の理解力は培われたんだ。おかげで自分のフットボールのレベルが一段上がったと思ってるよ」

これがポチェッティーノの手法のカギである。体を鍛えるだけでなく、頭もトレーニングしているのだ。トッテナムはビッグチームとの試合で虚弱であるとの評価が定着している。アンドレ・ビラスボアスのもとでも顕著に示されたその評価が、今シーズンはチェルシーとアーセナルを打ち負かしたことで払拭されつつある。

「監督は、相手がビッグチームでビッグプレーヤーとプレーする状況であっても決して自分たちは劣ってはいない、という気持ちを僕らの頭のなかに植えつけたんだ」とクラインは付け加える。

さらにハリー・ケイン。

「確かに変わったと思うよ。今シーズン、何度もスコアで相手にリードを許してきたけど、そこで僕らは強い意志を示し、自分たちのゲームプランを貫いて、最後の数分であっても戦い抜いた。(ノースロンドン・ダービーで)またやってやったでしょ。ここ(ホワイトハート・レーン)は、難しい戦場だって相手に思われるようになってるのさ」