/【コラム】ハリー・ウィンクス:今こそ「リトル・イニエスタ」が輝く瞬間(とき)

【コラム】ハリー・ウィンクス:今こそ「リトル・イニエスタ」が輝く瞬間(とき)

絶好の得点機だった。日曜の午後のワトフォード戦、右サイドのキーラン・トリッピアから上げられたクロスは、敵陣のペナルティエリアへと舞った。待ち構えるハリー・ケインはスパーズの同点弾となる閃光が頭を過った(よぎった)に違いないだろう。

 

しかし、無情にもスパーズの絶対的エースが繰り出したヘディングシュートは、ボールに十分な力を与えることはなく、その日から遡ってわずか6日前にオールド・トラフォードで魅せたゴールの再現とはならず、ヴィカレージ・ロードでスパーズに勝利の女神は微笑まなかった。

トリッピアが仕立てた極上のデリバリーは、皿に盛りつけられてケインの前に運ばれてきた。しかし、結果としてゴールデン・ボーイは、目の前で黄金の輝きを放つ決定機を自ら逸することになってしまった。

この決定機を演出したのは紛れもなくトリッピアではあるが、果たして最後の局面の脚本を手掛けたのは誰であろうか。それは若きイングランドの精鋭であるハリー・ウィンクスだ。

遅れてピッチに投入された彼は、トリッピアへ正確なパスを供給し続け、ケインを空いたスペースへ誘う(いざなう)働きを十分に発揮した。

ケインが相手キーパーのフォスターの前に位置するまでの過程において、ウィンクスの役割は必要不可欠に映った。彼が生み出す「アシストの前のパス」は、敵陣の密集地帯からプレーを迅速にスイッチングさせる重要な機能を果たしている。これまで過小評価されてきたその役割は、近代フットボールにおいて非常に大きな意味を持っている要素だ。

この「アシストの前のパス」を目の前で観ると、トッテナムでは唯一、ルカ・モドリッチの思い出が今でも頭に浮かぶ。彼より前にさかのぼると「プレ・アシスト王」のマイケル・キャリックもそうだろうか。