/ハリー・ケイン、ゼロから100までの道

ハリー・ケイン、ゼロから100までの道

スパーズが翌シーズンに僕を留めておきたいと思うほど良い活躍ができたはずだと思っていたけど、残念ながらまたローンに出された。本当に辛かった時期の始まりだったよ。一番落ち込んでいたのは、多分、レスター・シティにいた時かな。どうしてもチームに入り込めなかった。当時はまだチャンピオンシップにいたんだ。思い出すのは、自分のフラット(アパート)で一人この人生における酷い現実に直面していたこと。

「僕はチャンピオンシップのレスターでプレーできないのに...。どうしてプレミアリーグのスパーズでプレーできると思うんだ?」

あれが自分のキャリアの中で最初だったと言えるね。疑いが心の中に忍び込んできた。辛い感情だよ、疑念ってのは。ある夜、遅くに家族がやってきて、いろいろ話し合った。少しヒートアップしたかな。僕はひどく落ち込んでいて、もうここを離れたいと父に言ったんだ。とんでもない間違いを犯していたかもしれない。でも、本当に自分はダメだと思っていた。父はこう言ったよ。

「いいかい。努力し続けるんだ。やり続けるんだ。進み続けようじゃないか。全ては上手くいくさ」

 

数週間後、僕はまた一人でフラットにいた。当時すでにNFL(アメリカン・フットボール)にのめり込んでいてね。練習していないときは『マッデン(Madden NFL:アメリカン・フットボールのシミュレーションゲーム)』をやるか、YouTubeでニューイングランド・ペイトリオッツのビデオを観ていたんだ。そんなある日、偶然、トム・ブレイディのドキュメンタリーを見つけてね。それは、彼がNFLのドラフトにかかる前にいた6人のクウォーターバックについてのものだった。

それで分かったんだけど、トム・ブレイディはドラフトで199番目だったんだ。想像できるかい?それがどんなに衝撃的だったか。いい意味でね。その映画は本当に僕の心に響いたんだ。彼の人生のすべてで、誰もが彼の能力を疑っていた。カレッジに行ったときだって、コーチたちは彼から他のクウォーターバックに交代させようとしていたんだ。NFLのドラフトの前にスカウトたちが彼を計量する場面があったんだけど、彼がシャツを脱いだ時の光景は可笑しかったよ。ごく普通の男にしか見えなかったんだ。で、あるコーチが言った。

「このブレイディとか言う若造は背が高くてひょろっとしてるな。ウェイトトレーニング・ルームなんて見たことすらなさそうだ」

 

 

自分のことかと思ったよ。僕に対してもみんな同じことを思っていたからね。「そうだな、何と言うか、こいつはまともなストライカーには見えないな」ってね。

これには本当に刺激を受けたよ。ブレイディは心底自分を信じていたんだ。そしてただひたすら努力を続けた。「もっと上手くなるんだ」という野心に取り憑かれているかのようにね。僕にも強く通じるものがあった。妙に聞こえるかもしれないが、その時、頭の中で何か灯のスイッチがチカッと入ったんだ。レスターのフラットのソファの上、まさにそこでね。全く突然の出来事だった。自分自身に言ったよ。

「よーし、ハリー。僕もこの道を行くぞ。これ以上ないってくらい頑張っていればチャンスは必ず来る。それを掴んでやる!」

 

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