トッテナムがファイナンシャル・フェアプレーの抜け道で何百万ポンドを得る選択肢がとれない理由

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トッテナムは現在、一部のライバルクラブが利用しているファイナンシャル・フェアプレーにおける売却の抜け道に、同じように取り組める立場にない。

football.london/Alasdair Gold

プレミアリーグの多くのクラブが、「利益と持続可能性規則(Profit and Sustainability Regulations = PSR)」への対応において、“純利益”として扱える選手売却を利用してきたが、トッテナムは現在、その立場にない。

アカデミー出身選手の売却は、クラブにとって金鉱のようなものになり得る。というのも、そうした選手たちは獲得時にほとんど移籍金がかかっておらず、償却額(=帳簿上の価値)が非常に低いため、売却された際にその収益のほぼ全額が「純利益」として帳簿に計上されるからである。そしてこの利益は、移籍金支出とのバランスを取るための会計上の後押しとなる。

近年では、アカデミー出身選手を多額で売却することで、クラブがPSR違反を回避し、大きな財政的罰則や勝ち点剥奪などを免れるケースが数多く存在している。

トッテナムにおけるこの“抜け道”の最たる例は、2年前にハリー・ケインをバイエルン・ミュンヘンへ、総額約1億ポンドで売却したケースである。同じ夏、スパーズのダニエル・レヴィ会長は、ハリー・ウィンクスを1000万ポンドでレスターに売却し、その翌年にはオリヴァー・スキップを同じくレスターに2000万ポンド超で売却した。

しかし、スキップはクラブに残っていた最後の“フィールドプレーヤーのクラブ育成選手”だった。これはヨーロッパの大会の登録枠において極めて重要なことである。こうした“クラブ育成選手”は、15歳から21歳の間に最低3シーズン(36ヶ月)、クラブに在籍している必要がある。

この要件を満たすシニアの選手が4人いない場合、25人の欧州大会登録枠のうち、その不足分だけ空けなければならない。現時点でトッテナムにその要件を満たしているのは、ゴールキーパーのブランドン・オースティンだけである。そのため、今季のチャンピオンズリーグの登録枠は最大でも22人に制限されることになる。これを回避するには、前述のような、あるいはカイル・ウォーカー・ピーターズやデニス・サーキンのような他の元アカデミーの選手を呼び戻すしかない。

この理由だけでも、現時点のスパーズにとってアカデミー出身選手を“純利益”目的で高額売却するのは現実的でない。よほどファーストチームでの出場が見込めないと確信している場合を除いては、そうした売却は将来的にも難しい状況が続くだろう。唯一の例外は、18歳で加入した若手選手たちが、年数を経て“クラブ育成選手”に分類されるケースである。

たとえば、ルーカス・ベリヴァルとアーチー・グレイは、2026/27シーズンからはBリストに載せられる見通しであり、それによりヨーロッパの大会の主力枠に登録せずともチームに帯同できる。その後、十分な在籍期間を経て“クラブ育成選手”の資格を得ることになる。

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