新たにトッテナムのヘッドコーチに就任したトーマス・フランクは、クラブと契約を結んだ直後に一つの重要な決断を下した。そしてそれがすでに賢明だったことが明らかになっている。
footballlondon/Alasdair Gold
わずか約2秒のプレーが、なぜトーマス・フランクがマティス・テルの完全移籍にゴーサインを出したのかを如実に示していた。
U-21欧州選手権の準々決勝、デンマーク戦の残り5分。左サイドに流れたテルは、途中出場のマティス・アブリンからのパスを受けた。トッテナムの若者は2タッチほどでボールを運び、相手ディフェンダーを下がらせながらボックス内へと進入していく。
そのスペースを活かして、テルは右足でファーサイドへと完璧にカーブをかけたシュートを放ち、ゴールネットを揺らした。トッテナムのファンであれば、キャプテンのソン・フンミンがプレミアリーグで毎週のように決めてきたゴールと似ていると感じたことだろう。テルのゴールによって、フランスは2分以内に1-2のビハインドをひっくり返し、スパーズと代表でチームメイトであるウィルソン・オドベールらと共に歓喜の渦に包まれた。これにより、フランスは準決勝でドイツと対戦することになった。
この若きアタッカーの“活力あふれる”パフォーマンスをわずか2秒で語るのはさすがに不公平だが、この瞬間は「ビッグステージや大一番でも物怖じしない」ことを証明してみせた。彼のプロキャリアは、常に「試合に放り込まれて沈むか泳ぐか」という状況の連続だった。
スロバキアのフットバル・タトラン・アレナで行われた試合のそこまでの85分間も、テルはデンマーク守備陣にとって常に悩みの種だった。試合開始時は1トップとして出場。ドミニク・ソランケやリシャルリソンの負傷離脱により、トッテナム加入直後からターゲットマンとして奮闘した経験をここで活かした。
ボールをうまくキープし、サイドへと展開したり、味方へのバックヒールで好機を演出したり。時には自ら仕掛けて1人、2人と抜き去る場面も見せた。
前半には、空中戦のこぼれ球を右サイドのペナルティエリア内で拾うと、力強く鋭く落ちるボレーシュートを放った。惜しくもネットは揺れなかったが、デンマークのゴールキーパー、アンドレアス・ユングダルのスーパーセーブを引き出した。
ちなみに23歳のユングダルもスパーズとの縁がある。彼は昨季後半、クレモネーゼからベルギーのウェステルローにローン移籍しており、そこではまもなくスパーズに加入するルカ・ヴスコヴィッチや、アルフィー・ディヴァインの後ろでプレーしていたのだ。