だが、問われるべきは、ポステコグルーが執拗に高強度なプレッシングと運動量を求めたことが、その怪我の一因ではなかったかという点である。今季スパーズの選手たちは、プレミアリーグの他クラブに比べて格段に多くの走行距離とスプリント、オフザボールのラン、ファイナルサードでのプレスを記録している(1試合平均:走行距離111.5km、スプリント167.5回、オフザボールラン159.0回、ファイナルサードプレス55.2回)。
つまり、ポステコグルーのフットボールは、プレミアリーグとヨーロッパの両立を図るには向いていないのではないかという疑念がシーズンを通してくすぶり続けたのである。彼がリーグ戦においては戦術を変えようとしないことが証明されている以上(ヨーロッパリーグでは変化を見せたが、カップ戦は別物というのが彼の考えだ)、このスパーズをプレミアリーグの上位に戻ることは難しいと言わざるを得ない。彼らはあまりに“脆弱”のだ。
もっとも単純化すれば、ポステコグルーを解任すべき理由とはこうである。スパーズは、これほど酷いシーズンを指揮した監督を引き続き任せるわけにはいかない。2025–26シーズンが半分でも同じ出来なら、それでも到底許されないレベルだからだ。
ポステコグルー続投派の論拠
確かに、数字(成績)は芳しくない。だが、ヨーロッパリーグのトロフィーはどうだろう?素晴らしいものではないか?
それこそが、ポステコグルーを続投させるべきだという主張の核心である。彼はトッテナムにとって17年ぶりのトロフィー、そしてヨーロッパの舞台では実に41年ぶりとなるタイトルをもたらした。あらゆる逆境を乗り越えて、長年、「あと一歩足りないクラブ」とされてきたこのチームが、ついにタイトルを勝ち取れることを証明してみせたのだ。
しかも、その勝ち取り方もまた見事だった。彼は昨年9月の時点で「自分はいつも2年目に何かを勝ち取ってきた」と宣言していたが、それを本当に実現してみせたのだから。選手たちやファンに自分を信じさせるには、これ以上の材料はないだろう。
それは完璧な「マイクドロップ・モーメント」(最高の締めくくり)になり得た。ヨーロッパリーグ決勝でゴールを決めたヒーロー、ブレンナン・ジョンソンはビルバオでの試合後にそう語っていた。
しかし、それはまた“何かの始まり”である可能性もある。トッテナム・ホットスパー・スタジアムのスタンドで、そしてより重要なのは、クラブの会議室において、彼を支持するさらなる理由になり得るのだ。
もしポステコグルーが、スパーズが競い合おうとしているクラブたちと同等の移籍金や選手給与の予算で支援されれば、ポチェッティーノが与えられなかったものを与えられれば、彼にそのチャンスを与えて、プレミアリーグの上位陣とのギャップを埋めさせてみる価値はあるだろう。


