こうした人事の混乱のなかで、レヴィは優れたフットボール頭脳を見抜くことや、登用することに失敗してきた一面もある。たとえば、リヴァプールの革新的スポーティング・ディレクターであり、現在はCEOを務めるマイケル・エドワーズは、かつてハリー・レドナップの下でスパーズのアナリストであった。
また、現在イングランド代表のテクニカル・ディレクターであるジョン・マクダーモットは、ポチェッティーノの信頼厚いアカデミー責任者であった。レヴィの初期のフットボール・ディレクターのひとりであるダミアン・コモッリは、つい最近ユヴェントスのゼネラル・マネージャーに就任しているし、2005年にレヴィの下で働き始めたポール・バーバーは、今ではブライトン&ホーヴ・アルビオンの最も評価されるCEOの一人となった。
2023年のTimes紙のインタビューでバーバーはこう語っている
「ダニエルは、厳しくて、要求が多くて、時には理不尽だけど、クラブのために尽くしているのは間違いないよ」
堅物と交渉人としての顔
レヴィが好んで語る話の一つは、学校での保護者面談にまつわるものである。彼の記憶によれば、そのとき校長は両親に「この子はこのままではやっていけないから、学校を辞めさせるべきだ」と伝えたという。それを受けてレヴィは「絶対に負けない」と心に誓い、その後の試験ではオールAを取り、ケンブリッジ大学に進学。土地経済学を専攻し、最優等で卒業した。
そのエピソードを自分の人格の根幹と見なしていることは、レヴィの人となりを示す上で示唆的である。大学卒業後、彼は投資銀行で働いた後、いくつかの企業を経営し、その後、家族ぐるみの友人であるジョー・ルイスにフットボールクラブへの投資を持ちかけ、ENICによる買収を成立させた。
2001年にレヴィがクラブの指揮を執った当時、トッテナムの評価額は8,000万ポンド程度だったが、現在では、エンフィールドにある最新鋭のトレーニング施設、世界有数のスタジアム、そして定期的なチャンピオンズリーグ出場を原動力に、評価額は約30億ポンドにまで跳ね上がっている。1月に発表されたデロイトの「フットボール・マネー・リーグ」では、トッテナムの2023-24シーズンの収入は6億1,500万ユーロ(約5億2,300万ポンド)に達し、世界第9位のリッチクラブとされた。


