では、59歳のポステコグルーは、26年前にサウスメルボルンで監督に就任した若い指導者とは違った方法でプレッシャーに対処しているのだろうか?
「経験を積むごとに少しずつ賢くなっていくと思いたいね。何が起こるかある程度わかっているので、それに対してよりよく準備できるかもしれませんが、一つだけ自明なことがある。それは、私が人として、また自分の信念として揺るがないということだ。不変だよ」
「私がどのように対処するかは、自分がどこにいるか、どのクラブにいるか、誰と付き合っているかによって異なる。そういったことはあるが、私という人間に関して言えば、私は本当に変わっていないんだ」
ソーシャルメディアの出現とそこから生じる雑音は、クラブでの監督の在任期間を短縮する一因となっただけで、スマホやキーボードの背後からの反射的なお気持ちや怒りの感情は、最初に承認した本来のプロセスに時間を費やすのではなく、執務室での感情的でパニックに陥った決定につながることが多い。では、その短気な世界で長期的なヴィジョンを持つ指揮官が存在できるのだろうか?
「私には全く分からないよ。ありがたいことに、私にとって長期というのはそれほど長いものではない」
「その世界に住んで理解しなければならない。『選手にソーシャルメディアをやめろ』と言う人もいるが、それはできない。選手たちはそういう意味での関わりを楽しんでいるようだから、私は判断する立場にはない」
「最初は情報の即時性がとても気に入っていた。さまざまな情報源から情報を得られたからね。そこにはいつも悪口を言う悪党がいたが、今ではその量が、少なくとも私の観点からは、得られるポジティブなものをすべて上回っている。私は好奇心旺盛な人間で、情報中毒者だ。自分の脳、限られた脳のスペースをできるだけ満たすさまざまな方法を探しているんだ。しかし、2~3年前から、もうそこから何も得られず、自分がやりたいことについて前向きな気持ちも持てないことに気づき始めたので、今はやめたんだよ」
「それが一面だと思う。指導者の在任期間や、人々がも持つ忍耐力は、さまざまな方法で急いで判断を下し、物事を決定しようとする人々のプラットフォームの拡大により、飛躍的に短くなっている」
「それは難しいことだね。もし私が今若い指導者だったら、私は違う方法で対処すると思う。指導者として今後20~30年はどうなるかを考え、自分が行うすべてのことを短期的に考え、途中でヒットを出して自分のキャリアを築くだろう。なぜなら、そのような長期的な仕事が存在できる場所は非常に少ないからだ。そのような場所も存在し、成功例はあるが、それは例外であり、ごく一部でしかない」
周囲の騒音やクラブ再建の仕事の大きさを考えると、スパーズは長いキャリアの中で一番難しい仕事か、と聞かれると、ポステコグルーはしばらく考えた。
「一番難しい仕事は最初の仕事だったと思う。最初の仕事で失敗していたら、他の仕事はなかったと思うからね」