ディミトラキスは、ポステコグルーが気の利いたジョークを発していながら、一瞬で落ち着かないほど真剣な表情に難なく切り替えたこと、数年前にヌナワディングでプレーしていたポステコグルーの長男を、指導者の立場で指導したりするのではなく、父親として協力的に見守っていたことについて語った。
ポステコグルーはクラブハウス内の壁画で栄誉を讃えられているが、試合において自分を誰とも比較しないと常に明言しており、かつてディミトラキスに「彼はペップで、私はアンジだ」と厳しく言ったこともあるそうだ。
ポステコグルーのことを完璧に要約するディミトラキスのこの逸話は、この監督がクラブにやってきて、チームの試合を観戦していたときのものだった。
ポステコグルーは、若い選手たちが後方から見事なパスを繋ぐムーブを生み出し、ゴールで終わったのを見て、若い選手たちが自分の望んでいたスタイルを完遂したことに気づき始めたが、オフサイドの旗が上がったことでその努力はかき消された。
その場面を見守っていた保護者の多くは議論の余地のあるオフサイドに激怒し、審判に文句を言い始めたが、ポステコグルーはそのような瞬間でもいつものように冷静で、ただディミトラキスに向かってこう言った。
「彼らはオフサイドについて文句を言うのに忙しいので、 最も重要なこと、つまり子供たちがどんなフットボールをしていたかを見逃してしまったんだろう」
これがまさにポステコグルーがフットボールのプレーに望んでいる方法であり、彼と彼の父親が愛していた方法だからだ。それが最も重要なことであり、これからもそうだろう。
2018年、ポステコグルーが父親に別れを告げたとき、最期の瞬間に立ち会うことができ、愛していると伝え、そしてギリシャ語で2人にとってとても意味のある言葉「Κάτω η μπάλα」を口にした。
「ボールを保持しろ」。それはポステコグルーの流儀であり、ヌナワディングの流儀であり、そして今ではトッテナム・ホットスパーの流儀でもある。