タイトルやピッチ上での成功だけではなく、ポステコグルーは若いコーチや若い選手の育成という点でも自らの遺産を残したいと考えている。この育成の面を念頭に置いて、football.londonはメルボルンを横断し、プラーランからわずか16マイル強のヌナワディング・シティFCまで旅を続けた。
ここが、もう一つのアンジ・ポステコグルーの壁画へと導く場所である。この壁画は、人々から離れたところにあるが、同等か、それ以上に印象的な壁画なのだ。
ヌナワディング・シティFC は、メルボルン東部の、緑の芝生が広がる静かな郊外にある。おそらく、オーストラリアの有名なドラマシリーズ「Neighbours(ネイバーズ)」がこの近くのスタジオで撮影されていたことで有名なエリアだ。ピン・オーク・コートの住宅街は、ドラマの視聴者にはラムゼイ・ストリートとしてよく知られている。
メルボルン郊外にあるこのフットボール・クラブのクラブハウス内の壁には、ペップ・グアルディオラやヨハン・クライフの顔と並んでポステコグルーが描かれた壁画がある。
これはクラブのフットボール運営責任者であるニック・ディミトラキスの発案で、7年前にアーティストのアンソニー・サマルギスによって描かれた。
ディミトラキスがこの壁画を思いついたのは2008年、評論家のクレイグ・フォスターとテレビでの悪名高き口論の後、当時コーチの仕事を辞めていたポステコグルーに、メルボルン郊外にある自身のクラブで青少年育成プログラムを立ち上げるよう説得したことに遡る。なお、その時点ではこのクラブにユースチームはなかったのだ!
ディミトラキスに会えば、彼が無愛想なポステコグルーをいかに説得したかがすぐにわかる。エネルギーと笑顔と熱意の渦を巻き起こすこの男は、「正しい(correct)!」を合言葉に、しばしば大笑いが伴なってコミュニケーションを図っている。
ディミトラキスは、炎に飛び込む虫のようにポステコグルーに惹かれ、フットボールのプレースタイルに関するアイデアに魅了され、資金の問題に直面して停滞していたヴィクトリア州フットボール連盟の「Vエリート」ユース育成プログラムを再燃させたいと考えた。