メディアの目に触れないようにすることで、オフィスにこもる男、あるいはトッテナム・ホットスパー・スタジアムのディレクター・ボックスで一般のファンよりも上段に立ち、自分の居場所を踏みしめているような印象を与えるが、実際はそうではないかもしれない。例えば、彼はクラブの財団を通じてチャリティーや困っている人たちのためにたくさんの価値あることをしているのだが、誰もそういった側面を知ることはないだろう。
スパーズの会長とオーナーのENICは、プレミアリーグの他の強豪クラブと比べてトッテナムの支出の少なさ、トロフィーの欠如、そしてクラブが下す不可解な決断に不満を持つサポーターの格好のターゲットになっているのである。
トッテナム・ハイロードに建設した10億ポンド規模のスタジアムでは、細部にまで気を配ったレヴィ会長だが、ピッチ上の問題に関しては、まるで何の計画もないかのように、まったく対照的な考えで動いている。
彼はグレン・ホドル、ジャック・サンティニ、マーティン・ヨル、フアンデ・ラモス、ハリー・レドナップ、アンドレ・ビラスボアス、暫定監督としてティム・シャーウッド、ポチェッティーノ、ジョゼ・モウリーニョ、ヌーノ・エスピリト・サント、そして、現在のコンテを監督に任命している。
それは約20年で11人のマネージャー(またはヘッドコーチ)を雇ったことになり、平均で2年毎に入れ替えていることになるが、その間、会長は不動の地位を維持しており、ファンの批判はそこに向けられるのである。
レヴィは、進歩的な若いコーチのもとで才能のある若い選手を輩出し続けるボルシア ・ ドルトムント スタイルのクラブ・モデルを目指しながらも、チェルシーの劣化版としてかつてブルーズでトロフィーを獲得した監督を招聘してきたが、その監督たちは2クラブの間の歴然とした違いによって、同じ方法で成功することが難しいとすぐに悟るのである。
最近のポチェッティーノ、モウリーニョ、ヌーノ、コンテと続いたジェット・コースターは、年をまたいでも監督を変えても揺るがない明確なアイデアがこのクラブには存在しないことを完璧に証明してみせている。レヴィのシーズン終了時のファンへのメッセージに語られたトッテナムのDNAだが、誰も実際にそのDNAが受け継がれている兆候は見つけることができないのだ。
スパーズは、現代の無冠時代が続くクラブだが、一方で、最先端のアカデミーももはやファースト・チームへの登竜門としての機能を持っていないようだ。このクラブはこれら2つのものの少なくとも1つを上手くいっていることが続いたが、現在のトッテナムは驚くべきことにその両方の歯車が狂っている。
現在のアーセナルはポチェッティーノ時代のトッテナムに不気味なほど似た哲学によって成長余地を持ち、一方でクラブから資金面でのバックアップを受けている点では異なっている。ポチェッティーノ時代の終盤には、2度続けての移籍マーケットで補強ゼロという事態があったが、そのクラブの決定が間違えだったことをもう一方のノースロンドンのクラブが強く証明しているのだ。
レヴィの問題は、会長としての在任期間中で最も騒々しいと最も不安定なマネージャーを任命したことであり、もしも今後コンテにとって不遇な状況が生まれる場合、イタリア人が進む方向はただ一つであろう。