ダニエル・レヴィの居心地の悪い瞬間と、アントニオ・コンテの偽善的なトッテナムへの要求

この記事は約24分で読めます。

居心地の悪かったダニエル・レヴィ

スパーズの会長がノースロンドンのクラブに心血を注いで生み出したトッテナム・ホットスパー・スタジアムで、皮肉にも大音量で鳴り響いたチャントがあった。

ヴィラの2ゴール目の後、「ダニエル・レヴィは我々のクラブから出て行け」というメッセージが、一階層の大きなサウススタンドの多数の人々に歌われ、その名前がスタジアムに響き渡る中で60歳の会長はディレクターズ・ボックスに居心地悪そうに座っていた。

以前にも小規模な抗議運動はあった。たとえば2シーズン前のホーム最終戦でヴィラに敗れた後、選手たちがピッチを一周するという余計なイベントを実行したため、そこに残っていた観客の声の大きい人たちが会長の退任を求める声があがった。

しかし、今回は違う。より多くの人が参加し、より大きな声で歌っていた。20年間で1度のリーグカップしか獲得できなかったフラストレーションに見合うだけチャントである。

レヴィは立派なスタジアムを建設したが、陳列棚にトロフィーを並べることはできておらず、自らが生み出したスタジアムのピッチの上で繰り広げられるフットボールが酷く退屈なものになってしまっては、まったく意味がないのだ。

トッテナムの会長は、公の場に出ることへの警戒心から、ファンの間で人間味が欠如してしまっていることに苦しんでいる。結果敵に、ファンの間で彼の人格が柔らかくなることはなく、感情的なつながりも生まれない。その代わりに、不満を抱くスパーズ・ファンの間では、彼はネタ・キャラのような存在となり、多くのインターネット・ミームの題材となり、クラブの財政のすべてを厳しく管理するボンド映画の悪役のように描かれているのだ。

レヴィは公に出るのを嫌うシャイな男で、社交界に身を置くよりもデスクワークで物事を進めるのが好きな仕事人間であり、彼をよく知る人の中には、彼自身がそのような環境を気まずく感じていると表現する者もいる。マウリシオ・ポチェッティーノはかつて、レヴィと良好な関係を築いていたにもかかわらず、「簡単な人間ではない」と語っている。

問題は、レヴィの周囲にいる人間が積極的にファンとのコミュニケーションの欠如を奨励している点にあり、おそらくそういった周囲の人間は会長を保護しているという誤った感覚があることだろう。実は全く逆で、結果的にレヴィを矢面に立たせることになってしまっているのだ。

過去10年間にレヴィが受けた詳細なインタビューは片手で数えられるほどで、彼に話を聞きたいというメディアからのリクエストは常に断られる。そこでレヴィが自分の下した決断をより深く説明する機会もなければ、会長になってから犯した過ちに告白することも、計画通りに行かなかったことをあえて謝罪することもない。

ファンにとっては、シーズン最後のホームゲームのマッチデー・プログラムに掲載される恒例の「会長メッセージ」と、まもなく発表されそうなクラブの財務諸表の発表の際に添えられるレヴィの言葉しか知らないのである。この2つのレヴィの「メッセージ」は、ページに掲載される前にさまざまな人の目に触れ、かなり編集されることになる。

レヴィの最も人間的な側面は、昨年のAmazonのAll or Nothingシリーズでのインタビューや舞台裏の映像で示されたが、その映像でさえ、クラブによって慎重にコントロールされていたはずである。

この記事を評価する
タイトルとURLをコピーしました