ケインは次のように語っている。
「ハーフタイムに何人かが、『もっとアグレッシブに、もっとプレーの強度を高めなければいけない』と言っていたが、後半はそれができたと思う」
この言葉は確かにきっかけとなり、後半、それまで不調だった経験豊富なスター選手たちが本来の姿を正確に取り戻すのを、コンテは見守ることになったのだ。
なお、南フランスのスタジアムの雰囲気は敵対的だった。北側のスタンドは閉鎖されたが、他の3つのスタンドには54,000人のファンが詰めかけ、ロリスがウォームアップでピッチに立った瞬間から、スパーズの選手全員が相手のホーム・スタジアムで全く落ち着かない気分になることは無かった。ロリスは試合後に「孤独を感じていた」と認めたほどだ。
しかし、今シーズン、批判を浴び続けたスパーズは闘志を見せた。ここ数シーズン、彼らが苦手としてきた威圧的な雰囲気の中で強固な精神面で試合を立て直す力を示し、ソン・フンミンを30分後に顔面を痛めて欠くことになりながらも、ヨーロッパでのアウェイゲームでの長い未勝利の記録に終止符を打ったのだ。
元アーセナルのディフェンダー、セアド・コラシナツが迎えたマルセイユのビッグチャンスをヘディングで大きく外し、イヴァン・ペリシッチが同じく元ガナーズのアレクシス・サンチェスのシュートを見事にブロックするなど、後半は運に味方された場面もあった。
しかし、全体的にスパーズは後半をうまくコントロールし、ロリスは前半のアレクシス・サンチェスとジョーダン・ヴェレトゥの2度のセーブの後、あまりボールに触ることがなかった。
ペリシッチのフリーキックからラングレのヘディング・シュートで同点に追いつき、スパーズがこの夏獲得した最高の補強であるセットプレー専任コーチのジャンニ・ヴィオの功績がまた一つ増やすとともに、フランス人ディフェンダーはスタンドにいる家族の前でトッテナム入団後初のゴールを記録した。
ケインはゴール前で危険な場面を何度も迎えたがボールがうまく収まらずし、ピエール・エミール・ホイヴィアのシュートをクロスバーに叩いてしまった。
マルセイユは最後の瞬間までグループ突破に必要な勝機を見出そうと攻め立て、その結果、他会場で行われていた試合を含めて2試合のスコアが常に変動し、4チームすべてが試合の間にグループ通過（2位以上）の圏内を出入りしていた。
しかし、マルセイユは突破口を見出すことができず、替わりにスパーズは試合終了間際にセンターラインあたりで見事にボールを保持したケインが中央にパスを供給し、そこに疾走していたエナジャイザー・バニー（米国の電池メーカーののマスコットキャラクター）ことホイヴィアがこれを受けた。
ホイヴィアはそこからドリブルで走り出し、左ポストの内側に突き刺す完璧なシュートを放ち、スパーズの選手、スタッフ、ファン、そしてコンテを興奮の渦に巻き込んだ。
