そのため、スパーズを熱心に追いかけている人を除いては、ベンタンクールがどれほどトッテナムに貢献しているかを見落とす可能性がある。特に、トッテナムの中盤は、アントニオ・コンテのロープ・ア・ドープ（ボクシングの「消耗作戦」）を織り交ぜたカウンター・アタック戦術によって、しばしばストレスと過度の緊張を強いられ、分子レベルの薄さにまですり減らされているようにみえるほどだ。それでも、ベンタンクールをコンテ・ボールの犠牲者と見るのは、問題を完全に取り違えている。それどころか、彼はその戦術を成功させている縁の下の力持ちなのだ。
彼の重要性を示す一つの指標は、彼がピッチに立っているときのトッテナムが96分ごとにゴールを許し、彼がいないときは56分ごとにゴールを許すという失点率だろう。
そんな25歳のミッドフィルダーにとって、この1週間は、彼の基準からしても特に良い1週間だった。火曜日、マルセイユで行われた敵地の観衆、ディフェンスの踏ん張り、すべてを賭けた戦いとなったチャンピオンズリーグで大一番のセンセーショナルなパフォーマンスをベンタンクールは披露した。その前の土曜日のボーンマス戦では、滅多にゴールを決められないベンタンクールが、想像を絶するほどの見事なアディショナル・タイムの決勝ゴールを決めた。
混雑したエリア内でボールを受け、相手ユニフォームの群れに囲まれたベンタンクールは、それでもなお、自分のポジションを見極め、肉体の森を横切る優雅な軌道を描いて見せたのである。そして今、彼は日曜日のリバプール戦に向けて準備を進めている。
容赦ないタックル、両足からの素早いパス回し、ピッチの最も密集した場所でも疲れ知らずで走り回るタフネス、プレッシャー下での冷静さが、彼の存在を際立たせている。その最大の武器は、恐怖や驚愕、慈悲などの一切を廃した効率性の追求と、そしてプレスへの狂信的なまでの傾倒である。今シーズンのチャンピオンズリーグのグループステージでは、500分以上出場した選手の中で、走行距離のトップ5に入っている。さらにトップ・スピードは、クルゼフスキやリシャルリソンよりも速い。今週、ライアン・セセノンは、ベンタンクールがトッテナムの選手の中で最も体脂肪率が低いことを明かした。
では、なぜユベントスは1月にわずか1500万ポンドで彼を手放すことを決断したのだろうか？それは短期的な帳尻合わせのための引き起こされた移籍劇だった。負債を積んだユベントスはフィオレンティーナからドゥサン・ブラホビッチを獲得する資金の捻出に熱心だった。しかし、トリノでは、マッシミリアーノ・アッレグリのもとでチームが停滞し始め、不具合が彼のチーム運営に忍び込み始めているという感覚が芽生えていた。しかし、ベンタンクールのその後の成長ぶりを見ると、当時の彼の不安定さは、ユベントスが2020年のミラレム・ピャニッチの退団以来、欠いてきた深い位置でレジスタとしてプレーできるミッドフィルダーへの憧れという、クラブのより広範囲な機能不全の一部であることがわかる。
