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【分析】デゼルビが仕込んだ崩しの新機軸──封じられたはずの必殺パターン、新戦力で蘇る

【分析】デゼルビが仕込んだ崩しの新機軸──封じられたはずの必殺パターン、新戦力で蘇る

✔ デゼルビ、崩しの新機軸を披露
✔ 狭い守備ブロックを次々攻略
✔ 補強と戦術に明確な一貫性

レポート

ロベルト・デゼルビが3月にスパーズの指揮官に就任した際、最優先課題はプレミアリーグ残留だった。その使命を達成した今、夏の間に潤沢な資金と時間を得たデゼルビは、より高みを目指すチーム作りに着手している。

「最近20年で最も影響力のある指導者の1人」──グアルディオラも認めた原点

デゼルビの名を一躍知らしめたのは、2022年9月にブライトンでプレミアリーグの舞台に立った時だった。当時マンチェスター・シティを率いていたペップ・グアルディオラは、デゼルビを「最近20年で最も影響力のある指導者の1人」と評した。

デゼルビの真骨頂は、ビルドアップの組み立て方にある。センターバックがボールを持ったまま堂々と構え、相手FWが痺れを切らして寄せてくるのを待つ。この不自然にも映る「間」こそが、周囲のボランチとのワンタッチコンビネーションを引き出す合図であり、そこから前線へ一気にパスを刺す仕掛けだった。ゆっくりとした保持から、一瞬でアタッカー陣の1対1を作り出すスピードの変化は、デゼルビ流の代名詞と言えるプレーだった。

中央を封鎖するホッフェンハイムの4-4-2、崩し口は”おとり”のサイドバック

しかしフットボールは進化を続ける。デゼルビの狙いを研究した対戦相手は、中央を封鎖する守備ブロックを敷くことでこの崩しを無力化しようとしてきた。プレシーズンでスパーズが最も多く直面したのが、まさにこの状況だ。相手は極端に狭い守備陣形を敷き、センターバックからボランチへのパスコースを消しにかかる。デゼルビはこれに対し、中盤の選手をあえてポジションから引き出したり、サイドを経由して前進したりする新たな解決策を用意していた。

象徴的だったのが、プレシーズンで3-0の勝利を収めたホッフェンハイム戦だ。相手は4-4-2のミドルブロックを敷いたが、特徴は異様なまでの横幅の狭さにあった。両サイドハーフはまるで3人目、4人目のボランチのように中央へ寄り、2トップもスパーズのボランチ2枚の前に立ちはだかる形を取った。

これに対しスパーズは、ボール保持時に4-2-4に近い形を作る。両センターバック間でボールを動かし、ホッフェンハイムの守備陣形を左右に揺さぶった。サイドバックが高い位置を取ることで、相手のサイドハーフには難しい判断が突きつけられる。彼らをフリーにして受けさせるのは簡単だが、デゼルビはあえてこの選手たちを「おとり」として使う。サイドバックの存在が相手サイドハーフを中央から引き離し、空いたスペースへセンターバックが降りてくる9番へ直接パスを刺す構図を作り出した。ボールを受けた前線の選手は、素早くワイドの選手へ展開。スペースを得たウインガーは直進力を活かして仕掛け、シュートに持ち込むか、多くの場合は折り返しでフィニッシャーを演出した。

5-4-1のヘタフェも攻略──ベリヴァルが一時的な”3人目のCB”に

5バックの相手に対しても、デゼルビは新たな解答を用意している。ヘタフェも5-4-1という極端に狭い守備を敷いてきたが、スパーズはボランチ2枚をボール保持者側のセンターバック付近へ寄せることで、相手の中盤ラインを同サイドへ引き寄せた。その直後、逆サイドのセンターバックへ素早くボールを戻し、まだ十分にスライドし切れていない守備の逆を突いて、降りてくる前線の選手へ直接パスを送り込んだ。

中央の突破が難しい場合、ボランチの1枚がセンターバック2枚の脇に降り、一時的に3バックを形成する場面も見られる。ヘタフェ戦ではルーカス・ベリヴァルがその役割を担った。ベリヴァルをマークしていた相手ボランチは難しい判断を迫られる。ついて行けば中盤に穴が開き、そこをデゼルビは狙っている。かといってポジションを固持すれば、ベリヴァルにフリーでボールを持たせることになる。

トナーリの独走が生んだ先制点、サイドで得た時間とスペース

デゼルビの狙いを踏まえれば、ボランチは中央に留まるべきだと考えるのが自然だろう。しかしスパーズは、プレシーズンでその「常識」すら逆手に取ってみせた。ホッフェンハイム戦の先制点は、サンドロ・トナーリがあえて幅を取り、深い位置まで下がったことから生まれた。まるでサイドバックのようなポジションを一時的に取ったトナーリには、十分な時間とスペースが与えられた。屈強なフィジカルを誇るイタリア人MFは、ここからマーカーを剥がして一気にボールを運び、大きな距離を一気に踏破。組織が崩れたホッフェンハイムの守備を尻目に、ゴールへとつながる形を作り出した。

記事解説

今回のBBCの分析が示す最大のポイントは、プレシーズンで披露された戦術パターンと、夏の補強内容が驚くほど一致している点だ。単に選手を集めたのではなく、明確な設計図に沿って人選が行われたことがうかがえる。

まず、獲得したセンターバック陣に共通するのは、狭い守備網の中でも臆せずリスクを取れる技術力である。相手が中央を封鎖してきた場合、センターバックが単純に前へ蹴るのではなく、精度の高い縦パスで局面を打開できるかどうかが、デゼルビのシステム全体の生命線になる。中盤についても同様だ。マテウス・フェルナンデスやベリヴァルのようなタイプは、狭いスペースでプレッシャーを受けながらも、ワンタッチで味方に返す技術を持つ。これはまさにデゼルビが2022年のブライトン時代から重視してきた資質そのものであり、補強が場当たり的でないことの何よりの証拠と言える。

さらに、トナーリ、コナー・ギャラガー、デスティニー・ウドギといった選手たちは、中央が塞がれた際にワイドの深い位置からボールを持ち出せる推進力を持つ。今回のホッフェンハイム戦のトナーリの得点シーンが、まさにそれを体現していた。コディ・ガクポ獲得への関心や、サヴィーニョの獲得が実現したことも、1対1で仕掛けられるドリブラーをワイドに配置し、深い位置からの持ち出しと組み合わせるためのピースと解釈できる。そしてリシャルリソン、オマル・マーモウシュには、ゴール前でクロスを叩き込む役割が期待されている。

これまでのスパーズは、シーズンごとに戦術志向がぶれることが度々批判されてきたクラブでもある。今回のプレシーズンを見る限り、少なくとも監督・戦術・補強の3つが同じ方向を向いている点は、これまでとは一線を画す材料と言える。もちろん、対戦相手がシーズンを通してこの崩しへの対策を重ねてくるのは間違いない。それでも、狭いブロックへの複数の解答をすでに持ち合わせている状態でシーズンに入れることは、デゼルビにとって大きなアドバンテージになるはずだ。