レポート
マッコーリー銀行との資金前借り、昨年に続き2年連続で実行
football.londonのアラスデア・ゴールド記者によれば、スパーズはマッコーリー銀行ロンドン支店との間で「登記担保権(registration of charge)」をCompanies Houseに提出したことがわかった。登記は8月14日付で、4日後の8月18日に正式に公開され、書類自体は木曜(20日)に閲覧可能となった。これは昨年8月に行った取引と同種のもので、プレミアリーグから将来受け取る予定の賞金・分配金を前倒しで現金化する仕組みだ。
対象は2026年12月〜2027年6月分のプレミア分配金、金額は非公表
手法としては「レシーバブル・ファクタリング(債権買取)」と呼ばれる業界標準の資金調達で、将来一定期間にわたって受け取る予定の請求書(債権)を第三者に売却し、先に現金を得るというものだ。多くのクラブがテレビ放映権収入などを前倒しで得るためにマッコーリーのような銀行を利用している。今回の対象について、Companies Houseの登記書類は「2026年12月から2027年6月までの期間にプレミアリーグから借り手(スパーズ)に支払われる、または支払われる予定のすべての中央資金」と定義しており、2027年5月頃に支払われるメリット・ペイメント(成績連動配分金)も含まれるとしている。金額そのものは明記されていないが、昨年の同様の取引はBloombergの試算で9,000万ポンド規模とされており、プレミアリーグの放映権収入の大きさを踏まえれば今回も同程度の規模になる可能性がある。
ヴェンカテシャムとコレコットが調印、専門家が解説する仕組み
書類の末尾には、CEOのヴィナイ・ヴェンカテシャムに加え、事業・財務担当ディレクターのマシュー・コレコットも署名している。フットボールファイナンスの専門家キーラン・マグワイアは2020年にThe Guardianの取材に、この仕組みについて「更新するたびに、実質的に当座貸越の期間を延長していることになり、マッコーリーは次のプレミアリーグからのテレビマネーの分配を受け取る権利を得る」と説明している。「放映権料収入は年に3〜4回しか入ってこないが、人件費を含む諸経費は絶えず出ていく。多くのクラブがこの手法を使うのは理にかなっている」とも述べ、住宅ローンを組むのと同様にキャッシュフロー上のリスクを伴う一方で助けにもなる仕組みだと解説している。
記事解説
この資金前借りが今夏という時期に実行されたことは、偶然ではないだろう。スパーズはすでに2億3,700万ポンドを補強に投じており、さらにマーモウシュとサヴィーニョの合計1億4,000万ポンドに達する可能性のあるダブル補強交渉も進行中だ。手元資金を確保する動きとして、今回の前借りのタイミングは補強計画と無関係とは考えにくい。
ただし、これは「借金」というより「入金タイミングの前倒し」に近い性質のものだ。プレミアリーグからの分配金という、ほぼ確実に入ってくる収入を先取りしているに過ぎず、キャッシュフロー改善の手法としては一般的な部類に入る。マグワイアの解説にもある通り、多くのクラブが同様の手法を用いており、これ自体がスパーズの財務不安を示すものではない。
一方で、2年連続でこの手法に頼っているという事実は、放映権収入という確実な将来収入があってもなお、シーズン開幕前の大型補強期に手元資金が逼迫しやすいという構造を示している。今夏だけでも2億3,700万ポンド超という異例の投資規模を踏まえれば、こうした資金繰りの工夫を組み合わせながら補強を進めているというのが実態に近いだろう。

