レポート
ファンブログThe Fighting Cockは、ジェド・スペンスの3,000万ポンドでのインテル・ミラン移籍について、データを用いた評価コラムを掲載した。ワールドカップでのスペンスのパフォーマンスは国全体を沸かせ、スペースでの優れたボール運びやトランジションでの推進力、スピードを活かした1対1守備の強さが際立った。この活躍を踏まえれば、スパーズが3,000万ポンドでの放出を決めたことに懐疑的な声が上がったのも無理はないとしている。
一方で同記事は、スペンスの限界も同様に明確だと指摘する。90分あたりのチャンス創出は0.4、クロス成功率は19.6%と、いずれもプレミアリーグのSB平均を下回り、2025/26シーズンを通じてゴール関与はゼロだった。危険なエリアへの進入頻度は高いものの、決断力の欠如がしばしば足を引っ張っているという。デゼルビのシステムではこの欠点がさらに際立った可能性があるとし、昨シーズンのボール喪失29回はプレミアリーグのSBの84%以上を上回る数字だと紹介。プレッシングを誘う戦術を重視するシステムにおいて、スペンスは大きなリスクだったと分析している。ペドロ・ポロという理想的な適性を持つ選手を既に確保しているデゼルビにとって、スペンス売却で得た資金は、ポロのバックアップとしてより適したプロフィールの選手を獲得する余地を生むという。
スペンスの資質はむしろ、より実利的なセリエA、あるいはインテルの3バックの右サイドに自然にフィットする可能性があるとも指摘。同記事は、カルロス・アウグストが昨シーズン、インテルでSBとCBの両ポジションをこなした前例を引き合いに出している。移籍金についても、競争相手が少なかった状況を踏まえれば、価値が高いうちに売却する判断は賢明だったとし、2022年の獲得時1,250万ポンドから大きな利益を生んだと評価している。デゼルビは今夏の早い段階で、幸せや誇りを感じずにクラブに残りたくない選手は去るべきだと明言していた。ワールドカップでの活躍後、ポロ、ウドギ、ロバートソンの後塵を拝する序列にスペンスが満足していなかったとすれば、今回の決別はより正当化されるという。
記事解説
まず前提として、この記事はThe Fighting Cockという熱心なスパーズファンによるコラムサイトに掲載された、個人の見解を色濃く反映した分析記事である。ロマーノやThe Athleticのような一次情報とは性質が異なり、著者独自のデータ解釈と評価軸に基づく論考であることを踏まえて読む必要がある。とはいえ、チャンス創出やボール喪失回数といった具体的な指標を提示している点は、単なる印象論にとどまらない説得力を持つ。
特に興味深いのは、「デゼルビのプレッシングシステムとの相性の悪さ」という視点だ。W杯での輝きが個人の能力の高さを示す一方で、それが必ずしもチーム戦術への適合を意味しないという指摘は、移籍市場でしばしば見落とされがちな観点といえる。ボール喪失29回という数字は、確かにハイプレスを前提とする守備体系では致命的なリスクになり得る。
移籍金の妥当性についての結論も、これまでの一連の報道で指摘されてきた「競合クラブの少なさ」という事実と整合する。もっとも、この競合の少なさ自体、スパーズが当初プレミアリーグの複数クラブに4,500万ポンドという強気の評価額を提示し、各クラブがこれを高すぎると判断して撤退した結果でもある。つまり、3,000万ポンドという最終的な金額は、市場価値の低さというより、当初の強気な価格設定が通らなかった末に着地した水準と見るべきだろう。派手な争奪戦がなかったことを単純な「安売り」と断じるのではなく、「タイミングを見極めた合理的な判断」として位置付ける今回の論法は、ファンの間で分かれる評価に一つの視点を提供するものといえる。

