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【近況】スパーズ、今週中に前線補強へ前進の見通し──1億ポンドのトナーリ躍動、ロメロとスペンスは静かに退団

【近況】スパーズ、今週中に前線補強へ前進の見通し──1億ポンドのトナーリ躍動、ロメロとスペンスは静かに退団
✔ 1億ポンドを投じたトナーリが早速存在感、プレミア史上5クラブ目の大台に到達
✔ ロメロとスペンスが静かに退団、移籍金の低さに一部不満の声も
✔ テル、ムーアが躍動、今週は前線補強へ前進の見通し

レポート

1億ポンドのトナーリ、早速違いを示す

スパーズは今夏、単一選手にポンド建てで9桁の移籍金を投じ、フットボール史上わずか9クラブしか到達していない領域に足を踏み入れた。ニューカッスルとの間で9,250万ポンドに750万ポンドの上乗せを加えたパッケージで合意し、プレミアリーグでは5番目にこの規模へ到達したクラブとなった。トナーリはニューカッスルで110試合、ACミランで130試合、ブレシアで89試合に出場し、イタリア代表としても32試合の実績を持つ、既に完成されたプレミアリーグ級のスターだ。26歳の彼はスパーズの”メトロノーム”となり、リズムとテンポ、ロベルト・デゼルビの志向するプレースタイルそのものを決定づける存在になるとみられる。

54,345人が見守った土曜のホッフェンハイム戦で、その価値は早速示された。元ニューカッスル監督エディ・ハウは、ミランでプレーするトナーリを見て「恋に落ちた」と語り、長年獲得をクラブに働きかけてきた人物として知られる。35分には見事なタッチでホッフェンハイム陣内へ持ち上がり、ロバートソンへピンポイントのパスを送ってリシャルリソンの先制点を演出。トナーリは90分間フルに出場した。

ロメロとスペンス、静かな退団と移籍金への不満

クリスティアン・ロメロとジェド・スペンスは、それぞれアトレティコ・マドリードとインテル・ミランへの移籍をSNSで自ら発表し、クラブ側も後から簡素な投稿を2件行ったのみだった。ロメロは移籍成立の12時間以上前に発表。スペンスは公式発表の2時間半前、ホッフェンハイム戦キックオフのわずか2分前というタイミングだった。両選手ともスパーズで特別な瞬間を持っていたが、退団への大きな反発は見られない。ロメロは長年ラ・リーガ行きを望み、スペンスは序列でポロの後塵を拝し十分な出場時間を得られそうになかった。

両選手とも昨夏に新契約を結び、ワールドカップでも活躍したが、スパーズが手にするのはロメロが3,420万ポンド、スペンスが3,000万ポンド(いずれもボーナスによる上乗せ込み)にとどまる。ロメロには将来アトレティコが売却した際の利益に対する15%のセルオン条項が、スペンスにはインテルが将来彼を移籍させた場合、利益ではなく全額に対する10%のセルオン条項が付いている。両方を合わせても、今後1週間で見込まれるサヴィーニョ獲得の頭金には届かない規模だ。

テル、ムーアが躍動、前線補強への期待

デゼルビはサヴィーニョ、コディ・ガクポ、オマル・マーモウシュへの関心を維持しているが、テルとムーアは土曜、自分たちがサイドで何をできるかを改めて示した。テルは夏休み前にデゼルビから信頼を伝えられており、プレシーズンを通して好調だ。ムーアはブンデスリーガのケルンへのローンが有力視される中での起用だったが、テルが演出した2ゴール(59分・79分)で存在感を示し、プロとして初のブレースを記録した。

ムーアは右サイドが「最も得意ではない」と認めており、それがローン移籍観測の理由の一つだ。今夏はランクシャー、ヴシュコヴィッチ、デヴァイン、ヴェリズ、そして土曜にはフィリップスと若手の放出が続いており(フィリップスはミドルズブラへ2,000万ポンドで移籍)、5人合計で最終的に1億600万ポンドがクラブにもたらされる可能性がある。

その他の収穫と、観戦した面々

ベリヴァルは87分間の出場で冴えを見せ、8番としての成長機会を与えられている。アーチー・グレイは右サイドバックとして堅実な仕事を続けており、後任次第でその立ち位置が左右されそうだ。ロバートソン、セネシ、ファンヘッケ、キンスキーもそれぞれ持ち味を発揮し、控えに回ったヴィカーリオは次の所属先を待つ立場となっている。

スタンドにはクドゥス、フェルナンデス、マディソン、ソランケ、ファンデフェン、サール、ベンタンクール、ダンソ、デイヴィス、ウドギ、オドベールらの姿があり、クルゼフスキとドゥブラフカも館内で目撃された。日曜には2戦目が予定され、クドゥスとマディソンはベンチからの初出場が見込まれる。選手たちは月曜に休養を取り、ブレントフォード戦への準備に入る。

デゼルビ「明確な最強イレブンはまだない」

デゼルビは土曜、「明確な最強イレブンはまだ持っていない。我々は発展途上だ」と語った。その背景には新たな攻撃陣補強への期待があり、スパーズは土曜の売却で得た資金を元手に、今週中に前線補強で前進する見込みだという。

記事解説

今回の週末で最も象徴的なのは、1億ポンドのトナーリお披露目と、ロメロとスペンスの静かな退団という対照的な2つの出来事が同時に重なった点だ。派手な投資と目立たない世代交代が並行して進む様子は、デゼルビ体制がスカッドの構造そのものを組み替えようとしていることの表れといえる。トナーリの評価額はニューカッスル在籍時の実績、ミラン時代の完成度、そして何より「ポテンシャルではなく即戦力」という異例の投資判断に裏付けられている。デゼルビが数年越しで熱望してきた選手をようやく獲得できたという経緯自体が、クラブの資金力と意志決定のスピードが変わったことの証左だろう。

ロメロとスペンスの移籍については、発表のタイミングの淡白さがそのまま両選手の退団への温度感を物語っている。ロメロが移籍成立の半日以上前に自らSNSで発表した点、スペンスがキックオフ直前という慌ただしいタイミングを選んだ点は、いずれも「クラブとの別れを大きく演出したい」という意図とは程遠い。移籍金についても、ロメロとスペンスの合計でようやくサヴィーニョ獲得の頭金という規模感は、今夏のスパーズが「主力・準主力の入れ替え」と「エース級の補強」という全く異なる次元の取引を同時に進めていることを浮き彫りにしている。放出組の評価額の低さは裏を返せば、クラブ側が金額よりも早期の世代交代を優先した結果とも読める。

テルとムーアの躍動は、外部からの大型補強を待つ間の「保険」以上の意味を持ちそうだ。特にムーアについては、ランクシャーの好調な滑り出しが「最良の育成選手を安易に手放すことへの警鐘」として言及されている点が興味深い。今夏だけで5人の若手を放出し、合計1億600万ポンドという財務的な正当化がある一方、いずれは自前の才能を外部で開花させるのではなく内部で活かす段階に来ているという指摘は、クラブの育成方針そのものへの問題提起でもある。ムーアの今後のローン先選定や契約条件は、この文脈を踏まえて注視する価値があるだろう。

ベリヴァルやグレイの起用法にも、デゼルビの明確な意図が透けて見える。ベリヴァルには本人の希望する8番としての成長機会を与え、引き留めのメッセージを送り続けている。グレイの右サイドバック起用は、中盤志向の本人にとって不本意な面がありつつも、結果的に序列を固めつつある状況だ。スペンスの後任獲得の有無が、この万能型MFの今後のポジションを左右する重要な変数になりそうだ。

そして何より、デゼルビ自身が「明確な最強イレブンはまだない」と認めた発言は、今回の総括全体の結論と言える。トナーリという大型補強を成功させながらも、前線の駒不足という課題は依然残っており、今週中の攻撃補強の進展が、この新時代を単なる「大型投資」で終わらせず「結果」に結びつけられるかどうかの分水嶺になりそうだ。