レポート
マイキー・ムーアの後半2ゴールに支えられ、スパーズはホッフェンハイムに3-0で快勝し、プレシーズンの準備を白星で締めくくった。35分にリシャルリソンがアンディ・ロバートソンのディフレクションのかかったクロスを押し込んで先制すると、その後ムーアが2ゴールを追加。プレシーズン無敗のまま、来週末のブレントフォードでのプレミアリーグ開幕戦へ視線が移ることになる。
開幕1週間前も続くフィットネス懸念
今シーズンは、2シーズン連続の17位フィニッシュを経て、デゼルビ体制のもとで新時代の幕開けとなることが期待されている。しかし状況は例年とあまり変わらず、開幕まで1週間を切った現在も、デゼルビは複数の主力選手のコンディションに気を揉んでいる。強力な先発11人を起用したこの試合でも、欠場者は少なくなかった。
ミッキー・ファンデフェン、デスティニー・ウドギ、ジェームズ・マディソンはプレシーズンでまだ出場しておらず、ドミニク・ソランケやマテウス・フェルナンデスといった選手たちも出場時間を管理されている状況だ。翌日に予定される無観客の親善試合は、この日出場しなかった選手たちに出場機会を与える場となるが、来週末のブレントフォード戦を控え、フィットネス面の懸念材料はなお多く残っている。
ムーア、去り際の輝き
ムーアはスパーズからのローン移籍が近づいているとみられ、長く残留することはなさそうだ。それでも、これが当面白いユニフォームを着て見せる最後の姿になるとしても、確かな印象を残した。前半は本人の奮闘にもかかわらず結果に恵まれなかったが、後半開始早々に報われ、テルのクロスを押し込んでリードを2点に広げた。
ムーアは若いウィンガーに必要な自信と積極性を兼ね備えており、試合終了間際、この日最後のタッチとなった見事な流し込みのシュートで3点目を奪い、好パフォーマンスを締めくくった。スパーズは移籍市場閉幕までに攻撃陣の補強を狙っており、ムーアが望むような出場時間を得るのは難しいとみられる。それでも19歳は、機会さえ与えられればファーストチームで十分に通用することを、この夏を通じて証明してきた。
デゼルビにとって今回のパフォーマンスは喜ばしいものだったはずだが、特に補強がうまく進まなかった場合には、やや悩ましいタイミングでの活躍になったともいえる。
テル、好調なプレシーズンを継続
テルはプレシーズンを通じてスパーズで最も輝いていた選手の一人であり、ホッフェンハイム戦でも2アシストを記録して好調な夏を締めくくった。元バイエルン・ミュンヘンのFWは、前半こそもどかしい内容だったが、後半に入って存在感を増し、後半にスパーズがドイツ勢を突き放す中でムーアの2ゴールをお膳立てした。フランスの若手代表は59分、ボックスへの見事な飛び出しからムーアへゴールをお膳立て。2つ目のアシストでは、右足から左足へボールを持ち替えて逆サイドのウィンガーをボックス右側で走らせ、アカデミー出身のムーアが見事なフィニッシュでゴール左下隅へ流し込んだ。
スパーズは攻撃陣の補強を模索しているが、テルは今シーズンさらなる出場機会を求める主張を確実に強めている。昨シーズンは関係者全員にとってフラストレーションの溜まるものだったが、特にこのフランス人は出場機会の少なさに落胆していたはずだ。今年1月に退団しない決断をした21歳は、いま自身の将来をクラブに訴えかける材料を積み重ねている。
記事解説
今回の分析で興味深いのは、ムーアとテルという2人の若手アタッカーが、いずれも「出場機会をめぐる駆け引き」という共通の文脈の中で評価されている点だ。ムーアはローン移籍が既定路線とみられる中での”最後のアピール”、テルは今夏の補強次第で出場機会が左右される立場での”継続的なアピール”と、置かれている状況は異なるが、どちらも結果を出すことで自らの価値を証明しようとしている構図は共通している。
フィットネス懸念が開幕直前まで続く状況は、過去2シーズンの低迷と地続きの課題ともいえる。新体制が発足しても、選手層の脆さという根本的な問題が解消されたわけではなく、シーズン序盤の成績はこの点への対応力に大きく左右されそうだ。
テルが1月の残留判断を経て存在感を高めている点は、今夏の補強方針にも影響を与えうる材料だ。外部からの新戦力獲得と、既存の若手の台頭という2つの選択肢を、デゼルビがどうバランスさせるかが、開幕後のスカッド構成を占う上での注目点になりそうだ。

