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【評論】スペンスは”わずか2,500万ポンド”の危機──19歳ヴシュコヴィッチより安い”価格設定”の実態

【評論】スペンスは”わずか2,500万ポンド”の危機──19歳ヴシュコヴィッチより安い”価格設定”の実態

✔ スペンス、インテルへわずか2,500万ポンド規模での移籍が取り沙汰される
✔ 公式戦出場ゼロだった19歳ヴシュコヴィッチの売却額(5,000万ポンド)を大きく下回る水準
✔ デゼルビ「残ってほしいが、残れとは言わない」とスペンス・グレイへの姿勢を説明

レポート

好調な滑り出しから一転、失速する補強・放出

今夏、スパーズの移籍市場は好調な滑り出しを見せていた。2億3,700万ポンドを投じ、2度のクラブ記録更新を含む3人の新戦力を獲得し、さらにフリーで3人を加えた。同時に放出組でも、ヴシュコヴィッチで5,000万ポンド、ドラグシンで最大2,140万ポンド、ランクシャーで最大2,000万ポンド、ベリズとデヴァインの若手2人でも合計1,600万ポンド程度と、良い金額での売却を実現してきた。

しかしその後、動きは鈍化している。ニューカッスルとの1億ポンド規模のトナーリ獲得合意(約6週間前)以降、新戦力の獲得はない。デゼルビ監督は攻撃陣の補強を求め続けており、約2週間前にはシドニー遠征中、「次のボンバが近い」と語っていた。放出も、月曜のソロモン(ウェストハムへ500万ポンド+ボーナス200万ポンド+10%のセルオン条項)まで停滞していた。

“実績ある選手ほど安い”という矛盾

今のスパーズの放出における問題は、然るべきタイミングで然るべき金額での売却に努めてきたにもかかわらず、実際に退団を望んでいる選手たちには、その”正しい金額”が提示されていないことにある。ロメロが好例だ。

スパーズのキャプテンは今夏の退団を望んでおり、常連のアトレティコ・マドリードが関心を寄せているが、報じられている金額は、一度もプレミアリーグでプレーしたことのない19歳ヴシュコヴィッチの売却額(5,000万ポンド)や、契約最終年だったファンヘッケの獲得額(5,200万ポンド)を下回っている。ロメロは昨夏に新契約を締結したばかりで契約が3年残っており、直近のW杯でも活躍を見せたばかりだ。それでもこの金額にとどまっているのは、近年の出場状況への厳しい評価か、あるいは単に獲得を望むクラブの資金力の乏しさを示しているのかもしれない。

スペンスは”ミドルズブラ時代とほぼ同額”

スペンスのケースはさらに顕著だ。日曜に26歳を迎えたこのSBは、今まさにキャリアの絶頂期にある。今夏、W杯でのイングランド代表としての活躍で一躍知名度を上げた。延長オプションにより契約はまだ4年残っており、通常であればスパーズは高額での売却が見込めるはずだ。しかし実際には、インテル・ミランがわずか2,500万ポンド規模での獲得交渉を進めているという。これは、2022年にミドルズブラから加入した際の当初移籍金からわずか500万ポンドしか上乗せされていない金額だ。

リバプール、エヴァートンとの関連も報じられているが、イタリアのマネー事情がプレミアリーグに及ばないとしても、キャリア絶頂の選手にしてはあまりに低い水準と言わざるを得ない。インテルはレアル・マドリードへ移籍したデンゼル・デュムフリース(1,710万ポンドの解除条項発動)の後継を探しているため、あまり大金を投じたくない事情は理解できるが、だからといってスパーズが選手をタダ同然で送り出す必要はない。

デゼルビ「残ってほしいが、残れとは言わない」

スペンス本人は、インテルの存在感やチャンピオンズリーグでのプレーに魅力を感じているとみられ、出場機会への懸念も正当なものだ。ペドロ・ポロがW杯でベストイレブンに選出され、デゼルビからの信頼も厚く、新たな大型契約にも署名済みで、ここまでほとんど試合を欠場していない。欧州カップ戦のない今シーズン、そしてロバートソン加入により左サイドバックとしての出番も減っている中、スペンスに残される出場時間は多くない。

それでも、高額での売却でなければ、スパーズはむしろ全ポジションに二重の選手層を持つ体制を目指すべきだとされる。デゼルビはfootball.londonに対し、スペンスとベリヴァルを引き留めたいが、無理に引き止めるつもりもないと明言している。

「彼らに言っているのは、ジェドとルーカスに言ったのと同じことだ。”残ってほしい”であって、”残ってくれ”ではない。”残りたいなら残ってほしい”ということだ。残りたくないなら、出て行かなければならない。その場合はヴィナイとヨハンと話してほしい。金額や売却は私が管理する話ではないからだ」

グレイへの波及、ベリヴァルとの共通点

スペンスが退団すれば、アーチー・グレイへの影響も避けられない。20歳のグレイは右サイドバックもこなせるため、スパーズが新たな補強を必要としない可能性がある。デゼルビはグレイを高く評価し、プレシーズンを通じてキャプテンにも起用してきたが、本人が目指すのはミッドフィルダーとしての成長であり、”何でもできる便利屋”になることへのジレンマを抱えている。これは、昨シーズンほとんど本職の8番として出場できなかったベリヴァルの不満とも重なる。デゼルビはこの構図を認識しつつも、グレイの汎用性がチームに貢献していると評価している。

記事解説

そもそも「移籍市場」という呼び方自体が、多くの人に誤解を与えている。これは不特定多数の買い手が競り合う市場取引ではなく、あくまでクラブ対クラブの相対取引だ。価格は多くの需給と供給による”相場”で決まるのではなく、個別の交渉ごとに、その時々の力関係で決まる。ロメロやスペンスの評価額がヴシュコヴィッチやファンヘッケを下回るという”逆転現象”は、まさにこの相対取引という性質そのものを体現していると言える。

もう一つ見過ごせない視点は、ロメロとスペンスに提示される条件が芳しくない、あるいは獲得に動くクラブ自体が限られている背景に、両者の昨シーズンの振る舞いが影響している懸念だ。確かにW杯では2人とも好パフォーマンスを見せたが、降格圏争いという苦しい昨シーズンにおいては、監督や経営陣から見て模範的とは言えない態度を取っていたとされる場面もあった。実力そのものへの評価とは別に、こうした”人物評”が、獲得に動くクラブの慎重姿勢に影を落としている可能性は十分に考えられる。

そして何より重要なのは、スパーズが「売り出し中」、より正確には「売らなければならない状況」にあることが、すでに代理人の動きから公然の事実になっている点だ。これは交渉において致命的に不利な立場だ。対照的に、マンチェスター・シティのサヴィーニョやリバプールのガクポは、戦力構成上は余剰に見える存在でありながら、両クラブとも今夏一貫して「売り出し中ではない」という姿勢を崩していない。これは、まさに値崩れを避けるための意図的な演出だと考えられる。スパーズがロメロやスペンスの放出を急いでいることが周知されている以上、買い手側が強気の交渉を仕掛けやすくなるのは、ある意味で当然の帰結と言える。