プレミアリーグ残留を懸けたノッティンガム・フォレストとの決戦を前に、トッテナムの今シーズンが別の形になっていた可能性を検証する。最新のレポートは、昨夏の移籍市場で獲得に近づきながら、最終的にボートに乗せられなかった5人のタレントを列挙。ジェームズ・マディソンやクルゼフスキが負傷で長期離脱する中、彼らのうち一人でもスカッドに加わっていれば、今頃トッテナムが残留争いに怯えることはなかったかもしれない。逃した魚の大きさと、フロントの意思決定が招いた現状を詳報する。
レポート
モーガン・ギブス=ホワイト
昨夏、スパーズが獲得を熱望し、最も「逃した魚」として悔やまれるのがギブス=ホワイトだ。一時は契約合意間近と見られていたが、契約解除条項に関する機密情報の漏洩を巡り、フォレスト側から不適切なアプローチであるとの抗議を受け、交渉は泥沼化の末に破談となった。ギブス=ホワイトは最終的にフォレストと3年の新契約を締結し、今季はリーグ戦で8ゴール、2アシストを記録。マディソン不在の中盤で切望されていた創造性をフォレストで発揮している。彼に投じるはずだった資金はシャビ・シモンズへと振り向けられたが、シモンズのリーグ戦得点がわずか1ゴールに留まっている現状が、このリクルートの成否を浮き彫りにしている。
現状:ノッティンガム・フォレスト残留(今季8ゴール)
エベレチ・エゼ
クリスタルパレスの至宝、エゼもまたトッテナムの獲得リストの最上位にいた。スカッドはこの元QPRの司令塔とほぼ契約を完了させていたが、最終局面で宿敵アーセナルが「11時間目(土壇場)」に強奪。11月のノースロンドン・ダービーにおいて、エゼはスパーズを相手にハットトリックを決め、自らの価値を残酷な形で証明してみせた。エゼは現在アーセナルで調子を上げており、彼がもたらしたはずの中盤の安定と得点力は、そのままライバルの推進力へと転換されている。
現状:アーセナルへ移籍(ダービーでハットトリック達成)
ブライアン・エンベウモ
トーマス・フランクの就任時に最も期待されたのが、ブレントフォード時代の子飼いであるエンベウモとの再会であった。チャンピオンズリーグ出場権を盾に、スパーズはマンチェスター・ユナイテッドを上回る条件を提示したものの、カメルーン代表アタッカーは最終的にオールド・トラフォードを選択した。今季すでに9ゴールを挙げているエンベウモの決定力は、リシャルリソン以外のワイドアタッカーが沈黙し、コロ・ムアニら新戦力が適応に苦しむ現在のスカッドにおいて、喉から手が出るほど必要なものであった。
現状:マンチェスター・ユナイテッドへ移籍(今季9ゴール)
ヨアネ・ウィサ
エンベウモと同様にブレントフォードからの獲得を検討されていたのが、昨季19ゴールを挙げたウィサだ。デンマーク人指揮官との相性も不安視されていなかったが、最終的にブレントフォードが提示した5,000万ポンドという高額な要求額がネックとなり、スパーズは獲得を見送った。その後、ニューカッスルがこの金額を支払って獲得したが、ウィサは新天地で膝の負傷に見舞われ、今季は公式戦3ゴールと低迷している。これは、結果としてトッテナムが「弾丸を回避した(難を逃れた)」数少ない事例と言える。
現状:ニューカッスルへ移籍(負傷により停滞)
アントワーヌ・セメンヨ
セメンヨに対しては、昨夏の段階で多くのプレミアリーグのクラブが関心を示していたが、スパーズもその例外ではなかった。最終的に1月にマンチェスター・シティへのステップアップを果たした彼は、今季通算15ゴールという傑出した数字を叩き出している。特筆すべきは、移籍直前にボーンマスの選手としてスパーズから劇的な決勝ゴールを奪い、フランク前体制の解任へのカウントダウンを加速させたことだ。クドゥスの獲得には成功したものの、彼の負傷離脱後に10試合未勝利が続いている現実は、セメンヨのような即戦力を確保できなかったリクルート部門の脆弱性を露呈させている。
現状:マンチェスター・シティへ移籍(今季15ゴール)
記事解説
「目利き」の成功と「交渉力」の敗北
今回列挙された5人の名前は、ヨハン・ランゲらリクルート部門の目利きが決して的外れではなかったことを示している。ギブス=ホワイト、エゼ、セメンヨといった面々は、それぞれの新天地や現所属先でプレミアリーグ屈指のインテンシティを証明しており、彼らがスカッドに加わっていれば、ポステコグルーが遺した「自分たちが何者であるか」という問いへの回答は、もっと鮮明なものになっていたはずだ。しかし、問題の本質はターゲットの選定ではなく、その獲得を完遂できなかった交渉力の欠如にある。特にギブス=ホワイトを巡る不正アプローチ疑惑による破談は、クラブのプロフェッショナリズムそのものに疑問を抱かせる失態だ。
マディソンとクルゼフスキという、スカッドの心臓とも言える二人が同時に消えた際、ドレッシングルームに最も必要だったのは代替可能な個ではなく、戦術そのものを動かせる核であった。エゼにハットトリックを許し、セメンヨに引導を渡された今シーズンの歩みは、フロントがオファーを提示するタイミングと誠実さを誤った代償に他ならない。トゥドールが進めるボートの選別において、本来であれば彼らのような槍が漕ぎ手として並んでいるべきだったのだ。
ただし一方で、スカッドの構築が単純な個々の選手の戦力の足し算ではないことも今季のスパーズが証明した。スカッドの厚みを軽視するわけではないが、夏に獲り逃した彼らがトーマス・フランク体制で活躍シていたかどうかはまた別の話しだ。「交渉力」や「目利き」よりも、まずは実力がある選手たちに「スパーズに行けば活躍できる」と思えるようなチーム作り、そしてクラブの体制づくりこそが先決であるという現実から逃れることはできない。
情報元:Tottenham’s alternative season if 5 transfers went through including Morgan Gibbs-White
Quiz Cockerel
破談となった補強交渉の舞台裏
今回のレポートにおいて、昨夏の移籍市場で獲得目前とされながら、情報の漏洩や「不適切なアプローチ」を理由にフォレストから抗議を受け、交渉が破談となった選手は誰か?
1. エベレチ・エゼ
2. ブライアン・エンベウモ
3. モーガン・ギブス=ホワイト
4. アントワーヌ・セメンヨ
正解:3
正解はモーガン・ギブス=ホワイトだ。トッテナムは彼をマディソンやクルゼフスキの不在を埋める創造性の核としてリストアップしていたが、契約解除条項を巡るトラブルにより獲得に失敗。結果として彼はフォレストに残留し、今週末のスパーズにとって最大の脅威として立ちはだかることになった。

