トッテナム・ホットスパーの新指揮官イゴール・トゥドールが、日曜日の宿敵アーセナルとの大一番を前に、スカッド全員をディナーへ招待しチームの親睦を深めた。降格圏が迫る著しく深刻な状況下で、クロアチア人監督が選んだのは、高級店ではなく地元に愛されるギリシャ料理店であった。
レポート:マズウェル・ヒルの夜、15ポンドの料理が紡ぐ団結
イゴール・トゥドール暫定監督は木曜日の夜、ダービーに向けた英気を養うため、選手たちをロンドン北部のマズウェル・ヒルにあるギリシャ・キプロス料理店『Ousia(ウーシア)』へと連れ出した。SNSで拡散された写真には、シャビ・シモンズ、ジェド・スペンス、ウィルソン・オドベール、イヴ・ビスマ、パペ・マタル・サール、デスティニー・ウドギ、ケビン・ダンソ、マティス・テル、ヴィカーリオ、パリーニャ、ペドロ・ポロ、ミッキー・ファンデフェンといった主力の面々が、私服姿でリラックスした表情を浮かべる様子が収められている。
特筆すべきは、トゥドールが選んだこのレストランの「質素さ」だ。プロのフットボーラーが通う店としては極めて著しく手頃であり、メイン料理のラム肉でもわずか15ポンド(約3200円)という価格設定だ。メニューには伝統的なムサカ(牛肉の重ね焼き)や、チキンのスブラキ、タコ料理などが並び、選手たちはコーラや水のボトルを片手に、ピッチ外での貴重な交流を楽しんだ格好だ。
このトゥドールの行動は、オンライン上のサポーターから多大なる支持を集めている。あるファンは「トーマス・フランクがこのような決起集会を行う姿は見たことがなかった。これこそが、ビッグゲームを前にチームを一つにまとめるということだ」と投稿。また別のファンは「まだ何も決まってはいないが、スパーズに団結力が戻ってきたかもしれない」と、新体制がもたらしたポジティブな変化を歓迎している。
一方で、ノースロンドン・ダービーの「歴史的なトラウマ」を案じる声も上がった。2006年のシーズン最終戦、ウエストハムとのダービーを前に選手たちが「ラザニア」によって集団食中毒に見舞われ、4位の座をアーセナルに譲り渡した「ラザニア・ゲート」の記憶だ(※食中毒の原因は諸説あり)。ファンからは「ラザニアだけは注文するなよ」という冗談混じりの警告が相次いだが、トゥドールが選んだ地中海料理のラインナップには、その不吉なメニューは含まれていなかった。
現在16位に沈み、週末の結果次第では17位でダービーを迎える可能性もあるスパーズ。11名の負傷者と主将ロメロの出場停止という「骨組み」だけのスカッドにおいて、トゥドールがこのディナーを通じて注入した「戦う意志」が、日曜日のピッチでどのようなインパクトを生み出すのか。消防士として呼ばれた男の最初の大仕事が、N17で幕を開けようとしている。
背景・ソース
本記事のソースは、2026年2月20日に公開された『The Sun』のトム・コーリー記者によるレポートだ。
レポートは、トッテナムが16位に転落し、トーマス・フランクを更迭した直後の極限状態において、新指揮官がいかにして迅速に組織のメンタル面を立て直そうとしているかを伝えている。
背景には、1月の補強停滞に対するサポーター団体THSTの抗議や、経営陣への不信任が渦巻く殺伐とした雰囲気がある。トゥドール暫定監督は、戦術的な猛特訓を課す一方で、ピッチ外では選手たちに「人間としての繋がり」を思い出させる手法をとった。
スタジアムから5マイル(約8km)足らずの場所にあるレストランでのカジュアルな夕食会は、ポステコグルー時代のような「勇敢な団結力」を取り戻すための、現在望みうる最高の心理的強化策となっているのである。
スパーズジャパンの考察
1. 「軍曹」の意外な柔和さと人心掌握術
直前のSky Sportsのインタビューでファンデフェンが「今週はずっと厳しく追い込まれている」と語った通り、練習場でのトゥドールは極めて厳格な指導を行っている。その一方で、プライベートなディナーで選手と笑顔を共有するオン・オフの切り替えは、フランク体制下で「優柔不断さ」に困惑していたスカッドにとって、明確な指針を与えることになるだろう。
2. ラザニアの呪縛を払う「地中海の結束」
2006年の悲劇を彷彿とさせるダービー前の食事会あえて行い、かつ「ラザニア」(イタリア料理)という選択肢のないギリシャ料理店を選んだことは、クラブの負の歴史をポジティブに書き換えるための、無意識、あるいは計算されたパフォーマンスとも取れる。15ポンドという庶民的な価格の食事を共にした体験が、億万長者のスター軍団に「原点回帰」の精神を宿らせることを期待したい。ここからチーム再建に成功した暁には、現地観戦に訪れたスパーズファンに、ぜひとも訪問先の候補に入れていただきたい。
3. 170回目のダービーへ向けた、最後にして最大の強化策
12名もの負傷者を抱える現状において、戦術でアーセナルを圧倒するのは著しく困難だ。しかし、このディナーで見せたような「お互いのために戦う」という連帯感がピッチ上で再現されれば、16位転落の闇を払う魔法となる。トゥドールが放った「ロケット(刺激)」が、22日のN17で勝利という名の爆発を起こす準備は整った。
クイズ(Quiz Cockerel)
ジャンル:地理・気候 今回のレポートにおいて、トッテナムの選手たちが堪能した「ギリシャ料理」や「キプロス料理」の故郷である地中海沿岸。この地域に見られる、中学校の地理で学習する「夏は乾燥し、冬に降水がある」という特徴を持つ気候帯の名称は何でしょうか。
- 西岸海洋性気候
- 地中海性気候
- 温暖湿潤気候
- 熱帯雨林気候
解説: 正解は「2. 地中海性気候」だ。アルファベットの記号では「Cs」と表される。この気候は、夏に亜熱帯高圧帯の影響で著しく乾燥し、冬には偏西風の影響で雨が降る。トゥドール監督の故郷クロアチアもこの気候に属しており、今回のディナーは、霧雨の降るロンドンの空の下、選手たちに束の間の明るい活力を与えるための良薬になった。
