トッテナム・ホットスパーのダニエル・レヴィが、自身が保有するクラブ株式の売却を模索している。しかし、背後にあるオーナーのルイス・ファミリーは「クラブを売却する計画はない」と明言。10億ポンド(約1900億円)とされる評価額の妥当性を含め、支配権を巡る不透明な現状を詳報する。
レポート
ダニエル・レヴィが25年間に及んだトッテナム・ホットスパーのエグゼクティブ・チェアマンの座を降りてから約5ヶ月。彼は依然として親会社ENICの29.88%の株式を保有しているが、現在その持ち分の売却を本格的に検討している。レヴィ自身は香港の実業家Ng Wing-fai氏らとの交渉が「合意に近い」という報道を否定しているものの、複数の買い手候補と接触している事実は否定できない。
しかし、クラブの支配権そのものを巡る「真実」はより複雑だ。ジョー・ルイス率いるオーナー家は、現時点でクラブを売却する意向を全く持っていない。ルイス・ファミリーは昨年9月、Ng Wing-fai氏を含むアジアのコンソーシアムや、アマンダ・ステイブリー率いるPCPインターナショナル、さらには元DJのブルックリン・アーリック氏らからの3件の買収打診をすべて拒絶している。
レヴィが直面している最大の課題は、自身の持ち株に対する「10億ポンド」という強気な評価額だ。関係者の間では、ENICの少数株(マイノリティ)に過ぎない3割弱の持ち分に対し、これほどの巨額が支払われることへの懐疑的な見方が広がっている。さらに法的な制約も障壁となっている。マット・ロー記者が指摘した通り、レヴィの持ち株には、ルイス・ファミリーがクラブ全体を売却する際、優先的に交渉できる権利や拒否権が含まれていない。
つまり、レヴィの持ち株を買い取ったとしても、新しい株主はクラブの将来に対して実質的な権限(オーソリティ)を行使することができない。ルイス・ファミリーが経営権を手放さない限り、トッテナムの最終決定権は依然としてオーナー家の手の中に残り続ける。レヴィは退任時の声明で「このクラブを世界的なヘビー級へと育て上げた」と誇り、今後も情熱的にサポートを続けると語ったが、彼の「最後の大仕事」となるはずの株式売却は、オーナー家の拒絶と評価額のギャップという著しく困難な壁に突き当たっている。
