トッテナム・ホットスパーは、主力11名を欠き、さらにハーフタイムに主将ロメロを失うという絶望的な状況から、強豪マンチェスター・シティ相手に2-2の劇的なドローを演じた。アラスデア・ゴールド記者が、スタジアムを熱狂させた後半の逆転劇の舞台裏と、残り数時間となった移籍市場の最終戦略を詳細に紐解く。
レポート
ハーフタイムのブーイングは、タイムアップの笛とともに、満身創痍のチームを称える万雷の拍手へと変わった。トッテナムは、試合前に11名の負傷者を抱え、さらにフランクフルト戦から体調を崩していた主将クリスティアン・ロメロを、本人の強い出場意思に反してハーフタイムで下げざるを得ないという、極限の状況に置かれていた。しかし、この窮地がチームの「新しい顔」を呼び覚ます契機となったのである。
まず特筆すべきは、19歳のアーチー・グレイが見せた衝撃的なパフォーマンスだ。後半、トーマス・フランクがシステムを4-4-2へと変更すると、右サイドバックから一列上がったグレイが躍動し始めた。右サイドから中央へと、相手のプレスをいとも簡単にいなすスラロームのようなドリブル突破は、スタジアムの空気を一変させ、チームメイトに勇気を与えた。卓越した技術と19歳らしからぬ落ち着きを備えたグレイの推進力こそが、停滞していた前半の雰囲気を払拭し、シティの守備陣をパニックに陥れた最大の要因であった。
守備陣では、372日ぶりにプレミアリーグでの先発を務めたラドゥ・ドラグシンの執念が光った。序盤こそ試合勘の欠如から判断ミスを犯し、失点に関与したものの、ドラグシンは前十字靭帯(ACL)の重傷から復帰するために費やした数ヶ月の努力をピッチ上で証明してみせた。後半、彼は世界最強のストライカーであるアーリング・ハーランドに対して完璧なマーキングを見せ、空中戦のたびに力強く競り勝つことでスタンドを沸かせた。さらにパペ・マタル・サールがゴール前で「お尻」を投げ出してハーランドのシュートをブロックするという、なりふり構わぬ献身も見られた。この急造の守備陣が、後半にシティの枠内シュートをゼロに封じ込めた事実は、戦術を超えた魂の勝利と言えるだろう。
この同点劇はスタッツにおいても歴史的な意味を持つ。OPTAによれば、マンチェスター・シティがハーフタイム時点で2点差以上のリードを奪いながら勝利を逃したのは、2018年4月のマンチェスター・ユナイテッド戦以来、実に115試合ぶりの出来事であった。その衝撃を象徴するように、試合終盤の記者席の後方ではシティの分析官たちが怒りに任せて机を激しく叩き、絶叫し続けていた。かつてない「屈辱」をタイトル候補に味合わせたトッテナムの粘りは、N17がシティにとって最大の鬼門であることを改めて証明したのである。

