運命の岐路に立つエリク・ラメラ
このエントリーをはてなブックマークに追加 Check スパーズ関連のメディア報道・その他2015年8月21日
来月初旬に控える、ボリビアとメキシコとの親善試合2連戦へ向けたアルゼンチン代表メンバーにエリク・ラメラが選出されたことは、人々を大いに驚かせた。この知らせは、彼とトッテナムのファンとの間の信頼関係が極めて悪化してきているタイミングに報じられた。

前節のホームゲームのストーク戦では、試合開始から60分が経過し、2-0でトッテナムがリードしている状況でピッチに投入されたラメラ。しかしながら、彼は大きなインパクトを残すことができず、その後チームは主導権を相手に引き渡し、同点ゴールを許すことに。

マウリシオ・ポチェッティーノ監督の考えは実に明確であった。ストークはサイドから攻撃を仕掛けてきていたため、そのスペースを守るとともに、彼らの空けたスペースを利用してウイングが反撃することが狙いであった。しかし、実際にはラメラは効果的な守備をすることができずに、立て続けにボールを奪われるなど、攻撃面においてもチームに貢献することができなかった。彼は頼りないプレーに終始し、すっかり自信を失ってしまっているようだった。

誰がこのようなことを想像できたであろうか。まだラメラハ若く、これまでの生涯で常に"特別な存在"として扱われてきた男なのだ。

2004年。まだ12歳だったころ、ラメラはアルゼンチンの国中の新聞に自分が載っていることに気が付いた。バルセロナが当時、彼の所属したリーベル・プレートからの獲得を望み、大西洋を越えて遠路はるばる訪ねてきたのだ。しかしリーベルは、ラメラの両親が彼にブエノスアイレスに残って欲しいと願ったことでオファーを拒否したのであった。

その数年後に、彼は順調に成長しクラブのユースレベルに活躍の場を移したが、そこでも常に皆が彼のことを口にしていた。リーベルでプレーする他のユース選手たちは口をそろえてこう言った。「僕らはラメラ世代」あるいは「ラメラのもとでプレーする世代」だと。当時はロングヘアー、そして印象的な手足の長さは今のラメラにも面影が残っているが、才能あふれる左足が繰り出す傑出したプレーで、栄光の道を駆け上がっていった。

彼は19歳の誕生日を迎えるよりも前に、クラブで数々のレジェンドたちが着用してきた象徴的な10番のユニフォームを引き継いでいた。

しかし、当時クラブは困難な時期を迎えていた。3年間の平均獲得ポイントによってアルゼンチン・リーグの入れ替え戦(残留プレーオフ)を強いられたのである。前例のない2部リーグへの降格争いへ巻き込まれてしまうというクラブの混乱のなかで、10番のラメラはデビューしたのだ。

2011年の6月にクラブは2部へと降格してしまったが、こういった状況のなかでもラメラは卓越したパフォーマンスを披露していた。実際、彼がまだユースチームにいた時代のダメージが降格をもたらし、それについて彼を責めることはできなかった。そして2部リーグで戦うことになったクラブには資金が必要となり、ついに彼をローマに売却するときがやってきたのであった。

セリエAで迎えた最初のシーズン、ラメラの活躍は至って平均的なものであった。しかし、クラブのレジェンドであるフランチェスコ・トッティが自らの後継者であると認めるほどに、彼はここでも"特別な存在"であったようだ。そして、2年目の彼は、力強く自らそれを証明した。

ワイドな位置のミッドフィルダーに次第に慣れていったラメラは、とりわけ右サイドからのカットインを得意とし、リーグ戦33試合で15得点という好成績を残した。一部のファンからは、彼が未来のFIFAプレイヤー・オブ・ザ・イヤー候補であるという声さえ聞こえた。

しかしながら、彼の功績も実らずローマはチャンピオンズリーグ出場権を逃し、そこにギャレス・ベイルの移籍金で潤沢な資金をもっていたトッテナムが声をかけてきたのだ。

トッテナムでの最初のシーズンはそのほぼすべてを負傷によって棒に振り、2年目にはかすかな希望の光を見せたラメラ。そして、土曜日のストーク戦では、返り咲きが望み薄であることを証明してしまったかもしれないが、3年目を迎えるこの新シーズンは彼にとって大きく運命を左右する1年になるだろう。

彼の移籍金は巨額であったにもかかわらず、エリク・ラメラが現在のクラブでもはや"特別な存在"と考えられていないことは紛れもない事実であろう。トッテナムでは、彼は数多くいる選手のうちの一人でしかないのだ。しかし、今こそラメラはトッテナムで自身の価値を証明しなくてはいけない。コーチ陣にはアルゼンチン出身の同胞がおり、もはや言い訳は許されないのだ。

土曜日の失意のパフォーマンスのあとに、次のインターナショナル・ブレイクに入るまでの数試合、ポチェッティーノ監督がクラブの11番に対してどのような処遇を与えるかは非常に興味深い。

チームは今週末に、開幕から驚くほど良好なコンディションに調整してきているレスターとのアウェイゲームを控え、1週間後にはエヴァートンをホームに迎え撃つ。果たしてポチェッティーノは、我慢の限界が近づきつつあるホワイトハート・レーンの群集のなかに、ラメラをさらすことになるのだろうか。

ラメラはおそらく、クラブから一度離れてボリビア戦、メキシコ戦へ向けてアルゼンチン代表のチームメイトたちと時間をともに過ごしたいと考えているだろう。

一方で、アルゼンチン代表監督の"タタ"・マルティーノは、多くのヨーロッパのリーグ戦がまだ開幕していないといった理由から、単にコパ・アメリカで招集したメンバーを再び集めたに過ぎない。この段階でクラブでの調子を考慮するまでもないと考えたのだろう。

しかし、現実的な話として9月に開幕するワールドカップ予選においては、招集の基準は大きく変わっているはずだ。彼がアルゼンチン代表選手としてプレーし続けるためには、クラブでより大きなインパクトを残すしかない。つまり、根気強く期待してくれているファンたちにとってと同様に、今後の数週間はエリク・ラメラの人生において非常に重要な期間となるはずだ。