レノン 小さな投資で大きな成功
このエントリーをはてなブックマークに追加 Check スパーズ関連のメディア報道・その他2013年1月27日
「アーロン・レノンの才能に気づくにのは、3秒で十分だった。今や90分間、驚嘆の連続だ」

レノンの恩師であるグレグ・アボット監督(現カーライル)は、故郷リーズへの帰還を前にしたレノンをこう讃えている。

50万ポンド。レノンの獲得に要されたこの金額はどう聞こえるだろう。後にイングランドで最も優れたウィンガーの一人に成長し、26度目のバースデーを前にクラブで300試合に出場、ワールドカップに2度も選出された選手の獲得資金として極めて少額だ。

出来すぎた話に聞こえるが、日曜のFAカップ4回戦のリーズの本拠地エランド・ロードでの戦いで、この金額が妥当なものではなかったこと改めて証明してくれるだろう。

リーズ・ユナイテッドを離れてから7年半。50万ポンドでトッテナムに移籍して以来、アーロン・レノンはその故郷のチームと初めて対戦することになる。契約切れであったが、レノンは当時18歳であったため、補償金として支払いが発生している。

ハリー・レッドナップが最初にフル・シーズンの指揮を執った2009-10シーズンも絶好調だったが、ホワイトハート・レーンで8年目となる今シーズンはキャリア最高のパフォーマンスを披露している。

常に脅威となり、労を惜しまず、破壊力がある。25歳のレノンはかつて無いほどに自信に満ちているようだ。今シーズン、すでに3ゴールを記録し幾つものチャンスを生み出してきた事実は、レノンへの評価の一部でしかない。守備にも大きく貢献し、戦術理解の才で長けている点もまた、彼の称賛すべき一面である。

さらに情報筋はレノンとアンドレ・ビラスボアス監督との良好な関係を語っている。レノンはビラスボアスの指示の明確さ、率直さ、そしていつも個々の選手とオープンに会話を持とうとする姿勢を称えているようだ。

同様に、レノンもそれまでの「殻(カラ)を破って」って、クラブ在籍が最も長い選手の一人として、ドレッシング・ルームでより大きな責任を果たしていると言われている。なお、レノンは5ヶ月前に新たにクラブと4年契約を結んでいる。

しかし、レノンのスパーズでのキャリアの全てが順風満帆ではなかった。2001年のU-14の試合で、リーズの元ユースチーム・コーチ、グレグ・アボットがレノンの才能を見抜くのには「3秒あれば十分」だったが、ロンドンに移籍した当時、レノンにとってあまりにも重荷であり、時期尚早ではないかという迷いがあった。

現在、リーグ・ワン(イングランド3部)のカーライル・ユナイテッドで指揮を執るアボットは、スタンダード紙にのインタビューにこう答えている。

「ロンドンに移籍させたのは、1年早かったかもしれない。マンチェスター・ユナイテッドやリバプールも彼を欲しがっていた。そっちの方が地理的にもリーズにいる家族に近いからね」

「本人はロンドン暮らしを辛く感じたことだろう。今は乗り越えたようだが、アーロンは家族を愛しているからね。リーズで私はいつも、何か問題があれば彼や彼の家族を支えるようにしていたよ」

「私は彼の家まで車で出向いて試合に送り迎えしていたんだよ。他のクラブからの関心に惑わされたらいけないと思ってね。彼をリーズが獲得するのに成功して、彼はそこで43試合戦い、他のクラブに移っていった」

「このあいだの9月のキャピタルワン・カップで対戦する前に彼と話したよ。以前と変わらず、地に足のついた落ち着いた青年だった。自分の成功やライフスタイルなどは話さずに、家族やリーズで過ごした思い出ばかり語っていた。自筆のサインを書いたユニフォームをくれてね。私の宝物だよ」


シーズン前のレノンの調子には大きな波があった。だが、彼の数少ない変わらぬ性格の一つに、メディアに自分のプレーについて語ることが苦手と言う点がある。

彼のことを良く知らない人間にとって、レノンは寡黙に映る。むしろ愛想が無いとも思われる。良く知っている者には、彼はシャイで無口で有名なマンチェスター・ユナイテッドのポール・スコールズと同じく、注目の的になるのを好まないだけだと分かる。

それでもやはり彼の活躍は、彼が他者より抜きん出ていることをはっきりと物語っている。パスの質や苦手だった左足の使い方も向上したことで、アボットはレノンがいつか中央で攻撃的ミッドフィールダーとしてプレーすることも可能だと確信した。

レノンをスパーズに連れてきたフランク・アーネセンはその契約が実を結ぶ前にチェルシーへと去って行ったが、いまだこの移籍を誇りに思っている。

「アーロンには50万ポンド、トム・ハドルストンと2人で初期費用は110万ポンドぽっちだったよ」

現在ハンブルグでスポーティング・ダイレクターを務めるアーネセンは振り返る。

「その金額で彼を獲得できるんだから、決断するのは容易いことだった。2006年1月にアーセナルはセオ・ウォルコットに1200万ポンドを投じている。我々は、はるかに少ない金額でアーロンを手に入れた。ワトフォードにリーズが来たときに彼を見たんだ。ベストのプレーじゃなかったけど、彼の資質は見て取れた。スピード、ドリブル、クロスと全て素晴らしかったよ」

「私はPSVアイントホーフェンで、ロナルド、アリエン・ロッベン、ヤープ・スタム、ルート・ファンニステルローイといった選手たちの移籍に関わってきた。アーロンはその上を行くよ。あの移籍金と今の彼の実績を比較してごらんよ」

アーネセンもまた、レノンにとっての試練は首都ロンドンでの生活に適応することだろうと認識してた。

リーズ市内の北部リトル・ロンドンと呼ばれる地区で育ってきたレノン。FAカップの対戦でその故郷に帰還しようとしている今、レノンの次の挑戦は持てる限りの才能を全て解き放つことだ。

レッドナップ時代にファースト・チームのコーチだったジョー・ジョーダンは、「彼はまだ自分のスピードと質の高いプレーがどれほど相手の脅威になるか自覚していない」と語っている。

ひと度勢いに乗ると、レノンは相手にとって真の脅威になる。50万ポンド、最終的には100万ポンドになったが、これまでのスパーズの投資のなかでも最も有効なものである。


【レノンへの評価コメント】

フランク・アーネセン:私はPSVアイントホーフェンで、ロナルド、アリエン・ロッベン、ヤープ・スタム、ルート・ファンニステルローイといった選手たちの移籍に関わってきた。アーロンはその上を行くよ。

グレグ・アボット:彼はいつもサイドで相手選手を抜き去っていく。だが、私は4-2-3-1でセンター・フォワードをおいたトップ下でプレーできると思っているよ。彼の読みは、評価されているよりずっと素晴らしいからね。

ジョー・ジョーダン:まだまだ上手くなるよ。みんな彼がまだ25歳だってことを忘れているね。ウィンガーってのは試合に入っていくのが難しいんだ。だがアーロンは、どんどんその道を切り開いている。

アンドレ・ビラスボアス:彼の存在は非常に重要だ。時として彼の活躍は見過ごされることもあるが、自分のパフォーマンスがもう一段向上できると本人は分かっている。