Kyle Walker-Peters of Tottenham plays the ball before Newcastle’s Christian Atsu can close the debutant down in Sunday’s 2-0 win for the London club.
ニューカッスルのクリスティアン・アツのプレッシャーを受けるカイル・ウォーカー・ピータース

 

2016年1月、カイル・ウォーカー・ピータースは決断を下した。シーズン半ばのポルトガルでのトレーニング・キャンプの最中、オランダのエールディビジで中位にいるローダJCへの移籍でクラブ間が合意に至っていた。両クラブは両クラブは、ともにキャンプを張り、互いの選手のローンについて意見を交換していたのだ。19歳の誕生日を3ヶ月後に控えたウォーカー・ピータースにとって、ファーストチームでの実戦の味を初めて体験するチャンスの到来だった。

しかし、このローンは成立には至らなかった。ローダがハイボールを多用するスタイルであることがその原因で、ウォーカー・ピータースはロンドンに帰ることになった。そして、U-21スパーズに加わり、12ヶ月を過ごして、チャンスを待ち続けた。

そしてようやく訪れたチャンスが日曜のニューカッスル戦。ウォーカー・ピータースの強いられた我慢は、これ以上ないかたちで報われた。エネルギーと明晰さを持ってプレーし、マン・オブ・ザ・マッチの獲得は出来過ぎかも知れないが、トッテナムのレベルの高さを象徴する存在となった。そのパフォーマンスがマウリシオ・ポチェッティーノのもとで取り組んできたことの成果であるのは疑いないことだった。

ウォーカー・ピータースはポチェッティーノの指示どおりにサイドに開き、高い位置をとって攻撃をサポートし、一方で、たびたび訪れたクリスティアン・アツの脅威にも頑強に対応した。リスクを取るような場面は無く、落ち着いて求められる期待に応えたプレーぶりだった。さらにダニー・ローズの不満のコメントが周囲の話題をさらっていたことで、事前のウォーカー・ピータースのデビューについて話題は穏やかなものだった。

彼のデビューのタイミングは、近年のトッテナムの若いタレントの育成にとっても有益だった。確かに1週間前のユベントス戦でのキーラン・トリッピアの負傷、そして名前がそっくりなカイル・ウォーカーがスパーズを去ったことがウォーカー・ピータースにとって恩恵を与えることになったが、ポチェッティーノは予てから彼を構想に入れていた。

5月にマウリシオ・ポチェッティーノは、ジョシュ・オノマーやキャメロン・カーター・ヴィッカーズについて、次のように語っていた。

「来シーズンは今シーズン以上に彼らにチャンスがあると我々は予想している」

2016-17シーズンが進むに連れてウォーカー・ピータースも彼らと同様にファーストチームに定着していき、FAカップのアストンビラ戦やウィコム戦ではベンチ入りを果たしていた。そして、今シーズンは、より重要な役割を担うことが期待されている。

20歳になったウォーカー・ピータースが、これほどまでに長期に渡って、ファーストチームでの出番に恵まれなかったことは、驚くべきことかもしれない。この歳であれば、すでにローン先で何度かファーストチームでの実戦経験を積んでいるフットボーラーが多く、プレミアリーグのビッグクラブであれば、そうすることで出番の無い若手の不満を解消するように努めるものだからだ。

しかし、ポチェッティーノは若手選手たちを自分の手元に置いておくことを好む。昨シーズン、ウィガン・アスレチックを含む、フットボールリーグのチームがウォーカー・ピータースのローンでの受け入れを希望してきたが、トッテナムはそのオファーを断っていた。ローダのトライアルを受けるよりは、飛躍的成長が見込まれていただろうが、何よりポチェッティーノの育成手法のなかに置かれることが優先されたのだ。

同じようなことはハリー・ウィンクスにも言える。18歳でトッテナムでのデビューを飾ったが、プレミアリーグで初めて先発を飾ったのは21歳の誕生日の6週間前だった。ウィンクスもまたローンを経験せず、昨シーズン中は招集されれた時には常に万全の状態を保っていた。ウォーカー・ピータースも、その位置づけを確固たるものにするために同じような起用法をされるだろう。おそらく当初はトリッピアの控えとしての役割となるが、スパーズのサイドバックに課される多くの運動量を考慮すれば、ローテーション要員として出場機会は見込まれるはずだ。

 

ウォーカー・ピータースのフットボール・ライフは、アタッカーとして始まった。同年代のスパーズのチームのなかでは、スピードとパワーに定評があった。デビュー戦を経て、それらの特性が彼から発揮されることが目標となってくるだろう。敵陣深くでプレーした際、やや積極性を欠いていたからだ。これから彼の長所は徐々に生かされていくかもしれない。とりわけローズの置かれる状況が悪化するようなことがあれば、左サイドで彼が出場する機会も増やせるだろう。

現在、そのスポットライトを一身に集めているのはウォーカー・ピータースだが、ニューカッスル戦の前にポチェッティーノが、先発するには「期待が大きすぎる」かもしれないと語ったのは賢明だったのだろう。

そのコメントが周囲の期待を制御するためのものだったのか、選手を緊張を解きほぐすためだったのか。いずれにしても、効果はあっただろう。キックオフを前にしたウォーカー・ピータースの胃袋のキリキリとした感覚は、試合が始まって6秒以内、ジョンジョ・シェルベイからアヨセ・ペレスへの対角フィードに対応したことで消え去っただろう。175cmの体格ながら、ニューカッスルのストライカーに空中戦であっさり勝利してみせたのだ。さすがにローダでロングボールに対応する日々は厳しかったかもしれないが、ポチェッティーノがウォーカー・ピータースに与えた影響は、すべてが適切な結果につながっているように思える。